ホンダは第8戦フランスGPに3人のドライバーに『スペック3』のパワーユニット(PU/エンジン)を投入したのに続いて、第9戦オーストリアGPでは、アレクサンダー・アルボン(トロロッソ)にも投入することを発表した。これでホンダがパワーユニットを供給する4人全員にスペック3が投入されることになる。
このスペック3はHRD Sakura(栃木県の本田技術研究所)だけでなく、埼玉県和光市の航空機エンジンR&Dセンターにある航空エンジン研究開発部門が有する知見と技術が入っている。
F1第8戦フランスGPには、2018年の1月からHRD Sakuraのセンター長としてF1のパワーユニットの開発を率いている浅木泰昭氏が訪れていた。その浅木センター長に航空エンジン研究開発部門との協力関係について聞いた。
――ホンダのターボチャージャーは、IHIさんとも共同で開発しています。今回の航空エンジン研究開発部門の知見は、それとは別なのでしょうか。
浅木泰昭センター長(以下、浅木センター長)IHIさんと共同で開発しているのは空力設計の部分で、ターボそのものの形状(タービンのファンや渦巻き形状)とコンプレッサーです。それ以外のモーターとシャフト、そして軸受(ベアリング)はホンダで開発しています。
航空エンジン研究開発部門にサポートしてもらったのは、ホンダ側で開発するべき部分なので、IHIさんとは今後もこれまで同様、共同で開発していきます。
――航空エンジン研究開発部門の知見とは、例えばどういうものだったのでしょうか。
浅木センター長:これだけ長いシャフトをこれだけの高回転で使用することは市販車ではあり得ないのですが、航空エンジンは元々、高回転、高温で使用しつつも、人命に関わることなので、圧倒的な信頼性を要求されます。そういう環境のなかで開発しているので、その部分に関しては知見を持っていましたし、シミュレーション技術も非常に精度が高い。
航空エンジン研究開発部門以外にもさまざまな部分で知見を持ち寄ってオールホンダでF1を戦っていますが、それがどこかは話せる時期が来たら、お知らせします。