F1第9戦オーストリアGPではレッドブル・ホンダが優勝を果たした。その陰で、同じホンダ製パワーユニットを搭載し、同じモーターホームに居を構えるトロロッソ・ホンダは大きく沈んだ雰囲気に包まれていた。レッドブル・リンクではレース週末を通して一度たりともコンペティティブな走りができなかったからだ。
トロロッソはワークスチームのレッドブルと同じパワーユニットを使い、他メーカーのカスタマーチームとは違ってワークスと同じ運用をしている。それにも関わらずレッドブルとのあいだに大きな差が付いてしまったのは車体とチーム力の差に他ならず、それをまざまざと見せつけられてしまったことを意味していた。
第8戦フランスGPで不振をかこったトロロッソは、オーストリアGPの金曜フリー走行でセットアップの方向性について実験的な試みを行うことにした。しかしそれは上手く行かなかった。
「僕のマシンでかなり大がかりな実験的な作業を行ったんだけど、それが思った通りに機能してくれなかった。だから大幅にセットアップを変えて予選最優先でダウンフォースを付ける方向にセットアップしたんだ」(ダニール・クビアト)
フランスGPでクビアトがスペック3を投入してペナルティを消化し、オーストリアGPではアレクサンダー・アルボンが最後尾スタートのペナルティを受ける番になっていた。
そのため予選ではアルボンがダウンフォースを付けて車速が伸びないクビアトの前を走り、スリップストリームを使わせてアシストする役に回った。
「僕は最初からロングランだけに集中してセットアップを進めていたけど、予選ではタイトな争いだったからダニー(ダニール・クビアト)がQ2に行けるようにストレートでスリップストリームを使ってコンマ数秒でも稼げるようにヘルプすることにしたんだ」