今シーズンで4年目を迎えるハースF1チームと小松礼雄チーフレースエンジニア。第10戦イギリスGPでは、スタート直後にチームメイト同士で接触を喫してしまい、ハースは2台揃ってリタイアという結果に終わった。
苦戦が続くなか復調の兆しが見えたシルバーストンだったが、データ収集もままならない週末にフラストレーションは募るばかり。そんな現場の事情を、小松エンジニアがお届けします。
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今回のイギリスGPはこれまでの3レースほど気温も上がらず(決勝日は18度)、シルバーストンのコース特性がウチのクルマに合っていたこともあって、金曜日のフリー走行からガソリンを多く積んで走った際のペースも良かったです。
予選でもQ3に進めると思っていたので、ケビン(マグヌッセン)が16番手、ロマン(グロージャン)が14番手という結果は残念でした。ケビンはQ1でクルマのバランスがFP3からガラッと変わってしまい、タイムを出せませんでした。
逆にロマンのQ1はとても良かったです。9番手で通過したのですが、まだまだ伸びしろがあったのでQ2では良い戦いができると思っていました。Q2では風の変化もあり、ほとんどのドライバーがQ1のタイムを更新することができませんでしたが、ロマンも例外ではなく、他のドライバーよりも更にタイムの落ちが大きかったので14番手という期待外れの結果となってしまいました。
しかし、予選結果がこの位置からでもレースペースに自信を持っていましたし、みんながタイヤの磨耗に苦しむなかでもウチの状況は比較的良かったので、決勝レースでは1ストップ作戦で走りきれると思っていましたし、2ストップ作戦を採るチームを逆転する自信がありました。
ただこのように良い展開になりそうなレースで1周目にウチのふたりのドライバーがぶつかり、この接触によるダメージが原因で結局2台ともリタイアとなってしまい、すごくもったいなかったです。
ふたりともタイヤを交換して再度コースへ出て行くことができましたが、ピットに戻ってくるまでの間に、パンクしたタイヤによってフロアやブレーキダクトなどの繊細な空力パーツが壊されたことが原因でリヤのダウンフォースが失われ、マシンバランスが変わってしまいました。とても安全に走れる状況ではなかったのでリタイアする決断を下しました。
また今回は、ロマンのクルマを開幕戦仕様の空力で走らせていました。金曜日と土曜日はデータを採れていたので、日曜日に風向きが変わったなかで52周のレースを走り切るというのは、ポイントを獲得するかどうかにかかわらずデータを集めるうえで重要なことでした。
そういう面を考えても、このような結果は受け入れ難いものです。また本来ならば、シルバーストンで集めたデータを解析したうえでミーティングをしようと思っていたのですが、その予定も狂ってしまいました。
これまでも2台がリタイアに終わったレースはありましたが、その場合、僕は通常ピットウォールに残ってレースを最後まで見ながら、他のチームの戦い方から学べることを学びます。しかし今回はギュンター(シュタイナー/チーム代表)に呼ばれて、すぐにピットウォールを下りて、モーターホームにある彼のオフィスへ行き、ふたりでミーティングしました。
過去3レース(カナダ、フランス、オーストリア)は、今のクルマの状況ではどんなにうまくやってもなかなか結果につなげるのが難しいレースでしたが、今回のシルバーストンではやっとコンディションもコース特性も合い、良い結果を出せそうでした。そんな矢先にあろうことかふたりが1周目にぶつかったのです。第5戦スペインGPでふたりが接触した後に、こういうことは2度とあってはいけないとはっきりさせていましたから、なおさらです。