F1第14戦イタリアGPはトロロッソにとって色んな意味で地元レースだった。チームが拠点を置く国であり、スタッフの多くがイタリア人であるというのはもちろん、ダニール・クビアトもロシア人でありながらイタリアが地元のようなものだ。
「イタリアに来てもう10年になるからどの国よりもここで長く過ごしてきたし、この国のことはよく分かっていて言葉もロシア語ほど完全に無意識にとは言わないけどかなり近いレベルで話せる。カート時代からイタリアの人に助けてもらって、去年はフェラーリで働き、今年もこうしてイタリアのチームで走っている。僕にとっては地元レースに限りなく近いし、ロシアGPとふたつのホームレースがあるような感覚だよ」
前戦ベルギーGPからチームに戻って来たピエール・ガスリーも、イタリア人のガールフレンドとともにミラノに住んでいて自宅に最も近いグランプリだ。つまりチーム全体が地元レースという特別な思いを持って臨んでいた。
しかしSTR14のマシン特性からすると超高速のモンツァは決して得意なサーキットとは言えなかった。
「計算上は僕らにとって良いサーキットとは言えない。長いストレート、長いコーナーというのは僕らのクルマに合っているとは言えないんだ」(クビアト)
ガスリーは約8カ月ぶりのチーム復帰とは言え、昨年担当していたエンジニアチームがクビアトを担当していることから、昨年とは異なるメンバーと新たなタッグを組み直してのレースとなった。マシン特性も昨年のトロロッソとも今年のレッドブルともかなり異なるという。今年のSTR14は昨年のレッドブルRB14からギヤボックスやリヤサスペンションをはじめとしたリヤエンドを受け継いでいるように、去年型とは似て非なるマシンとなっているからだ。そしてフロントウイングの規定も変わり、レッドブルとは異なるアウトウォッシュ型のフラップコンセプトを採っている。
「見た目はあまり変わっていないように見えるかもしれないけど、去年とはレギュレーションが違うしマシンのキャラクターは随分違うよ。ステアリングだって去年とは違うんだ。エンジニアのメンツも違う。夏休み明けの月曜から(ベルギーGPまでの)数日間、ファクトリーでやれるだけのことはやってきたけど、今のところは上手くいっているよ」
レースエンジニアを務めるのは同じフランス人のピエール・アムランで、走行中の無線やブリーフィングでのやりとりでは他のチームスタッフやファクトリーのスタッフとの情報共有という観点から全て英語でのやりとりとなるが、個人的に話すときにはお互いに母国語であるフランス語同士で話し合える利点もある。
夏休み当初はシーズン後半戦の保証を受けていたというレッドブルのシートを失いトロロッソへと追いやられたことに明らさまに不満の感情を露わにしていたガスリーだったが、第13戦ベルギーGPでマシンで走り始めてすぐにレッドブル時代以上の笑顔が戻っていた。