今シーズンで4年目を迎えるハースF1チームと小松礼雄チーフレースエンジニア。これまでタイヤを機能させることに苦労してきたハースF1だが、サマーブレイク明けの第13戦ベルギーGP、第14戦イタリアGPではトップスピード不足という大きな問題にも直面することとなった。またタイトルスポンサーとの契約終了という報道もあり、チームへの影響も気になるところ。小松エンジニアが現場の事情をお伝えします。
──────────
約1カ月のサマーブレイクが終わり、後半戦が始まりました。サマーブレイクの間は2週間に渡って規則でファクトリーも閉鎖され、仕事のメールを受け取ることもありません。昨年は飛行機に乗りたくなかったのでフランスの田舎に車で旅行に出かけましたが、今年の夏休みは家族で日本に行きました。
子供たちにとっては夏の日本は初めて。暑くないか少し心配していましたが、まったく大丈夫で元気に遊び回っていました。セミの声、風鈴の音色、浴衣を着ての花火など初めてづくしで大喜びです。あっという間の2週間でしたが、日本を満喫してとても良い気分転換になりました。
さて、今回は夏休み明けのベルギー、イタリアの2連戦を振り返りたいと思います。まずはベルギーGPですが、スパ・フランコルシャンではタイヤをうまく機能させつつクルマの抵抗を削って直線スピードを稼ぐことの折り合いをつけるのが難しかったです。
とはいえ予選の手応えはそれほど悪くなくて、ケビン(マグヌッセン)はQ3に進んで10番手(スタートは8番手)でした。ロマン(グロージャン)はケビンとわずか0.059秒差の11番手(スタートは9番手)でQ3進出を逃しましたが、実はロマンのクルマには問題があって、低速コーナーでクルマがうまく動いていませんでした。それがなければ2台揃ってQ3に進めていたはずなので、クルマ自体の競争力としてはまあまあだったと思います。
決勝レースではロマンが上手くスタート直後の1コーナーの混乱を避けて、6番手までポジションを上げることができました。ピットストップも良く、狙い通りのところでコースに復帰することができましたが、その後にダニエル・リカルド(ルノー)に追いついてからが良くなかったです。ロマンはリカルドよりも1秒以上速いペースで走っていましたが、1コーナー立ち上がりからオールージュを抜けて行く直線区間でルノーを抜くことができず、結果的には40秒ほどタイムロスしてしまいました。
当初ロマンよりも後ろを走っていたセルジオ・ペレス(レーシングポイント)がどの位置でレースを終えたのかを見れば、その差は一目瞭然です(ペレスは6位、ロマンは13位)。ペレスはロマンを抜いた後、2周くらいでリカルドのことを追い抜き、その後は単独走行で6位に入っています。
それでも第1スティントでは、ロマンはランド・ノリス(マクラーレン)の後ろでまあまあなペースで走ることができたので、ある意味想像通りのレースペースではありました。第2スティントでリカルドを抜けなかったことがすべてです。
トップスピードが伸び悩んだせいで、ケビンも第1スティントではペレスをはじめ後続車からポジションを守ることができませんでした。ミディアムタイヤに履き替えた後は、クリーンエアのなかで良いペースで走ることができ、最後は12位でレースを終えました。ロマンとは逆に、ケビンは第1スティントのロスでレースが決まってしまいました。
2台ともミディアムタイヤに履き替えた後のペースが思いのほか良かったのは収穫でした。金曜日のフリー走行の時点ではペースが悪かったので、レースではなるべくミディアムタイヤを使いたくないと思っていたのですが……。こういう点は、まだウチがレース前にうまく理解できていない部分のひとつで、これから改善していかなければいけません。