今回紹介するこの写真はメルセデスW10のモノコック下を前から撮影したものだ。F1マシンのエアロを司る、重要な役割をするフロア(1)、決して平らではなく両サイドポッドの下はステップフロア(2)と言われ、モノコック下面よりも高く持ち上げられているのがわかる(3)。
台車に乗せられてはいるが、モノコック下の床には高圧縮ウッドで作られたプランクプレート(4)が見える。この黄色い板の先端にはチタニューム製のスキッドブロック(5)が装着され、バンプ等で派手に上がるスパーク(火花)はほとんどこのスキッドブロックが路面に接触して発せられる。特に強いレーキエアロのマシンはこの部分と路面との接触が多い。
コクピットの真下に位置するフロアの先端はまるで舌の様に前方につき出し、左右のバージボード等に囲まれ、コクピットの下面とともにいわゆるトンネルを形成している。
メルセデスW10ではノーズ下面にイカヒレ状のスポイラー(6)を設置してミニディフューザーを作り、この前方からの空気流を加速してトンネルに送り込む。この空気流はセンターキール(7)で左右に別れ、サイドポッド側面へと送られる。また、この下の部分の上面は先端から中央に設けられた船の切っ先のようなキール部の根元辺りまで上り、ここでステップフロア高さに合流。大きなバージボード(8)の裏側を走る。
このトンネル内からポッドサイドへ向かう空気流はバージボード前方からの空気流から隔離されていて、それぞれの流れの高さによって動線が違うことがわかる。
トンネル内の下面に沿って流れる空気流は、バージボード裏側のフロアフロントと言われる空間(これは側面のステップフロア前端から前方の空間)でステップフロア下面へと送り込まれ、上部はポッド側面へと向かう。
このF1の喉元とも言える空気流の動線を考えた上で、異様に複雑なフロアフロントのエアロガジェットを見つめると、徐々にそれぞれの役割が見えてくる。それはまた次の機会にでも。