5度のF1チャンピオンであるメルセデスのルイス・ハミルトンは、F1第16戦ロシアGPでの出来事から、セバスチャン・ベッテルはもはやフェラーリのナンバー1ドライバーではないと認識していると語った。
2019年シーズンのベッテルは、チームメイトのシャルル・ルクレールに比べて予選パフォーマンスの低迷が続いている。さらにルクレールが第13戦ベルギーGPと第14戦イタリアGPで連勝を飾ったことも相まって、フェラーリのドライバーの序列に疑問符が付く状況になっている。
ハミルトンは、ソチでのチームオーダーの出し方が、フェラーリに表れた変化の兆しを明確に示していると感じたようだ。
「ソチでのフェラーリの動向は興味深いものだった。なぜなら、これまでは当然セブ(ベッテルの愛称)がナンバー1だったのに、あそこでは明らかに違っていたからだ」と、ハミルトンは木曜日に鈴鹿で語った。
「力の入れ方や全体の動向を見るかぎり、チームはシャルルの待遇を上げようとしている」
しかしハミルトンは、ルクレールを優先するというフェラーリの判断には疑問を呈した。
「それはチームにとって良いことだろうか? 僕はそうは思わない。ただ、(ナンバーワン待遇を置くことは)彼らがずっと掲げてきた方針だからね」
ロシアGPでのフェラーリのチームオーダーは、ルクレールがベッテルにトウを与えてトップに立たせるというものだった。両者の間に動きやすいスペースを作ると同時にメルセデスのライバルたちを引き離すことを狙っており、レース前にルクレールとベッテルはこれに合意していた。
実際にチームオーダーが発令され、ベッテルはトップに立ったが、その後ベッテルはルクレールにトップのポジションを譲り返すよう求めたチームの指示を聞き流した。
これについてハミルトンは、チームメイトに全面的な信頼を置いたルクレールが正直すぎたのではないかと語った。
「シャルルは『トウを使って良い』と言ったんだろうね。その後彼は自分のポジションを守ろうとしなかったけれど、本当は守るべきだったんだ」
「ポジションを譲ったときに、返してもらえると期待してはいけない。僕なら譲り返さない」
ハミルトンは、ドライバー間のパワーバランスが変わりつつあるフェラーリの現状と、自分がマクラーレンからF1にデビューした1年目に、フェルナンド・アロンソの陰で目立たない存在として始まった2007年当時の状況とを対比した。
「僕がフェルナンドと一緒だったとき、当然彼がナンバー1だった。でもシーズンの中盤には、チームがふたりを平等にする方針に変わったんだ。それによって両者の関係も変化していった」
「常にナンバー1待遇を欲しがるドライバーがいる。その方が彼らにとって楽だからだ」
「僕は自分の手でナンバー1をつかみたい。シーズンを通してポジションを固定するようなことはせず、平等にスタートして、ある週にはどちらかひとりがナンバー1待遇を得るし、別の週にはあらためて競い直すんだ」
「自分をナンバー2だと認識するのは、敗北主義者になるようなものだ」