1994年のアイルトン・セナの事故死から、今年で25年。それを記念して故国ブラジルでは、さまざまなイベントが予定されている。木曜日のインテルラゴスでも、セナの愛車だったマクラーレンMP4/4のデモランが行われた。田辺豊治テクニカルディレクターとのインタビューは、まずは当時の思い出話から始まった。
──セナの25周年で、今日もサーキットをMP4/4が走りました。同じターボでも、今のF1よりずいぶん甲高い音でしたね。
田辺豊治テクニカルディレクター(以下、田辺TD):ええ。テールパイプがターボから直接出ている分、音はかなり違いますね。今は、MGUーH(熱エネルギー回生システム)を介したりしますから。むしろ、インディカーに近いかもしれません。
──今のF1の音に関しては、今だに不満の声が出ていますが、何とかできないものなんでしょうか。
田辺TD:MGU−Hがなくならない限り、少し難しいでしょうね。今日の走行の音を聞いてると、そんなに回っていない。レーシングスピードで回したら、格段に迫力のある音が出たと思います。それがV10やV12だったら、まったく違う周波数の音になるわけで、むしろ『音色』と言っていいでしょうね。
──セナのことも含め、いろいろ思い出の詰まったブラジルGPだと思います。田辺さんにとって一番忘れられないブラジルGPは?
田辺TD:やはりセナが地元で初優勝した、91年ですかね。
──5速が壊れたまま走り続けたレース。セバスチャン・ベッテルも、あれが最高だったと会見で言ってました。5速なしで、あんな風に走れるものなんですか。
田辺TD:エンジン側で言えば、あらゆる条件でノッキングが出ないようなセッティングはしています。たとえば3000回転で、全開にしても。今の市販車でも、たとえば6速でぎりぎりまで回転数を下げて、そこから踏んで行ってもノッキングしない。
──もちろんセナのスロットルワークも、非常に巧みだったんでしょうが。
田辺TD:そうですね。
──アメリカで久々に表彰台に上がったマックス・フェルスタッペンが、「前から戦闘力はあったけれど、それがなかなか結果に結びつかなかった」と言っていました。比較的標高の高いブラジルGPでも、メキシコ同様に力強い走りができそうですか?
田辺TD:確かにメキシコはきちんと走れましたし、標高600mのオーストリアでも速かった。ここはそれよりちょっと高い標高800mですが、パッケージ全体の冷却も含め問題ないと思います。決勝日はちょっと暑いコンディションになりそうですから、初日から対応していく必要があると思いますが。