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F1 ニュース

投稿日: 2019.12.20 12:29
更新日: 2019.12.20 13:22

【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第16回】「若いチームにはどこかで躓く時がある」対処の方法が2020年を左右するカギ

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F1 | 【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第16回】「若いチームにはどこかで躓く時がある」対処の方法が2020年を左右するカギ

 今シーズンで4年目を迎えるハースF1チームと小松礼雄チーフレースエンジニア。最終戦アブダビGPでは2020年シーズンに向けたテストを行うなど、最後まで開発を続けていた。2019年はチーム史上最も厳しいシーズンとなったが、チームの全員が全力で解決策を探しながらこのシーズンを戦い抜いた。そんな現場の事情を小松エンジニアがお届けします。

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2019年F1最終戦アブダビGP
#8 ロマン・グロージャン 予選16番手/決勝15位
#20 ケビン・マグヌッセン 予選15番手/決勝14位

 前戦ブラジルGP以上の苦戦を覚悟していたアブダビGPですが、結果はやはり予想どおり厳しいものとなりました。しかし、良い収穫もありました。金曜日にロマンが今年最後の開発パーツをテストし、かなり面白い結果が得られました。もちろん2020年仕様のクルマはとっくに開発が始まっていますが、来年はほとんど規則に変更がないのでアブダビで得られた良いデータはすぐに2020年のクルマに活かせます。

 当初はFP1でこのパーツを使いデータを集めて、FP2では元の仕様に戻す予定だったのですが、ロマンの感覚も良かったので、もう少しデータを採るためにFP2でもテストを続けました。

 FP2でもクルマは好調で、燃料を増やしてロングランをした時にどうなるかを確認するのが楽しみだったのですが、なんとこのロングラン中にバルテリ・ボッタス(メルセデス)にぶつけられてしまいました。

 これで新しいパーツは修復不可能なレベルまで壊されてしまい、この部品は1セットしか作っていなかったので、FP3以降この仕様で走らせることはできなくなりました。結果、元の仕様に戻して走ったFP3以降は絶対的に戦闘力に欠けており、勝負になりませんでした。

2019年F1第21戦アブダビGP FP2でバルテリ・ボッタス(メルセデス)とロマン・グロージャン(ハース)が接触
2019年F1第21戦アブダビGP FP2でバルテリ・ボッタス(メルセデス)とロマン・グロージャン(ハース)が接触

 一方、通常の仕様でFP1から走っていたケビンは、週末を通してアップダウンはなかったもののやはり絶対的な性能不足でした。予選は15番手とあまり良い結果ではなかったですが、ケビンにとってはあまり予想外ではなかったようです。あとコンマ1秒速ければ13番手あたりでしたが、残念ながら彼も僕たちもこの辺りを最初から予想していたんです。

 グランプリ終了後にはタイヤテストが行われ、2020年仕様のタイヤをテストしましたが、あまり良いところがなかったので、僕らはFIAにこのタイヤを2020年に導入するべきではないというフィードバックを出しました。

 第19戦アメリカGPのFP1でこのタイヤを試した時にグリップがないというのはわかっていたのですが、必ずしもこのタイヤで一発のタイムを速くすることが目的ではないので、1周のグリップが良くなかったからといってそれだけで総合的な判断を下すことは出来ません(特に路面温度もとても低かったので)。

 本来ならば高温域でもっとよく機能するなどのメリットがあるはずなのですが、一番の問題はそういった改善がみられなかったことです。タイヤは、すごく単純に言ってしまえば構造とコンパウンド(要はゴム)に分けられるのですが、そのどちらともに良くなかったんです。シーズン後のアブダビテストはピレリの1年間を通じたタイヤ開発の集大成のはずです。そのテストで使用された製品としてはあまりにもお粗末であるとしか言いようがありません。

 とはいえどのチームも、“新しいタイヤを使うとどこのチームが自分たちよりも不利になるのか”を考えて結論を出すので、もしかしたら政治的な投票によって2020年のタイヤが採用される可能性もないことはないと思っていました。2020年に使うタイヤを2019年仕様に戻すということは、10チーム中7チームの同意がないとできないからです。

 このコラムの第8回でも書きましたが、F1では、どれだけ自分たちが有利になるようにレギュレーションを変えることができるかというところにも勝負があります。みんな相手のことをよく見ていますし、結局は駆け引きですからね。

 しかし、結果はなんと満場一致で10チームすべてが2020年仕様のタイヤを使うべきではないという結論をだしたのです。どれだけ2020年仕様のタイヤが酷いものだったかわかりますよね。

■「どこかでつまずいた時に、どう対処するかが重要」


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