スペインのバルセロナ-カタロニア・サーキットで行われた2回のテストを終えて、各チームの新型マシンに様々な特徴が見えてきた。今回は2020年F1開幕戦オーストラリアGPに向け各チームの実力を数値化して分析。連載第7回はBWTレーシングポイント・フォーミュラワン・チームだ。
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■レーシングポイントのチーム戦力:100点満点中85点
■テストでの最速タイム:1分16秒634 5番手/全10チーム中(セルジオ・ペレス/C5タイヤ/テスト第2回目・最終日午後)
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2020年シーズンにおいて、台風の目になりそうなのがレーシングポイントだろう。
新チーム発足後、2度目の新車発表となった今年、レーシングポイントがプレシーズンテストに登場させた新車『RP20』は、メルセデスと酷似した外観をしていた。そのため、テストが行われていたカタロニア・サーキットのパドックやピットレーンではレーシングポイントのマシンは「ピンク・メルセデス」と呼ばれていたものである。
テクニカルディレクターのアンドリュー・グリーンも「われわれはレッドブルと同様のハイレーキ・コンセプトをあきらめ、メルセデスのローレーキを採り入れた。メルセデスのパワーユニットとギアボックスを使用するのだから、それを使わない手はなかった」と、メルセデスを模倣したことを認めていた。
「ただし、それはあくまでレギュレーションの範囲内での話。メルセデスとデータの交換はしていないし、レギュレーションで定められているパーツは自分たちで設計し、製造している」(グリーン)
2007年のスパイ・ゲート事件のように、ライバルチームから設計図などのデータを漏洩させるなどして、情報を手にすることは禁止されている。しかし、ライバルチームのマシンの外観を見て、それを模倣すること自体は違反とはならない。
それでは、レーシングポイントはどうか。まずノーズは非常に似てはいるが、先端の円形部分の根元にあたる部分のくびれ方がレーシングポイントのほうが締まっているのがわかる。
フロントウイングのフラップも上から2枚目のフラップの内側に切れ目を入れるというデザインは同じだが、その切れ込みの入れ具合が微妙に違う。また一番上のフラップの形状も微妙に異なる。
またフロントウイング翼端板の外側の後ろ端にはミニカナードが立っているが、その長さが明らかに違う。さらに翼端板前方上側にメルセデスは別のミニカナードをつけているが、レーシングポイントにはそれが装着されていない。
バージボードやサイドポンツーン周辺のデザインも、確かにメルセデスの昨年のマシン『W10』に似ているが、細部を見ると、それは似て非なるもの。
逆にメルセデスの昨年のマシンW10との違いが明確に確認できなかったものは、前後のサスペンションとリアウイングだったが、このうちサスペンションは他チームから購入できることがレギュレーションで定められている。
一部のライバルチームがレーシングポイントを批判しているが、すでにこうしたやり方で参戦しているチームはレーシングポイント以外にも2チーム(アルファタウリはレッドブルのデザインを継承、ハースはフェラーリのデザインを継承)あるように、現在のF1ではレーシングポイントのようなやり方は問題にはならない。
今年のF1はメルセデスとレッドブル・ホンダ、そしてフェラーリが熱い戦いを繰り広げるだろうが、その後方で行われる、レーシングポイント、アルファタウリ、ハースによる代理戦争にも注目したい。