2020年のF1シーズンもいよいよ幕開け。今シーズンも激しいつばぜり合いを見ることができそうだ。新車がシェイクダウンした冬季テストのパフォーマンスからもある程度、今季の各チームの勢力図が見えてきた。底辺の底上げ、トップエンドの拮抗……つまりは今年のF1は昨年以上に僅差のレース展開が見られそうだ。
もちろんメルセデスAMGとレッドブル・ホンダのワークスの戦いはかなりの激戦が期待できる。この主権争いに似たトップエンドの戦いにフェラーリがどこまで食い込んでくるか、というのが今季のトップチームの戦いの見どころかもしれない。
フェラーリは残念ながら、冬季テストでは間違いなく精彩を欠いていた。もちろん、開幕前のテストだけのパフォーマンスで実際に開幕すれば違ったストーリー展開となることは毎年のことだが、現時点でメルセデス、レッドブルに遅れをとっているのは事実だ。
トップ3チーム以外で面白いのはピンク・メルセデスと言われているレーシング・ポイント。セルジオ・ペレスもランス・ストロールも(!)、ふたりとも速さを誇示して見せた。もちろんほぼ昨年型のメルセデスW10と同じ開発手法を選んだ結果、パフォーマンスが昨年に比べて大きく向上したのは明らかだ。
これはトロロッソからチーム名を変えたアルファ・タウリでも同様。今季のニューマシンAT01は昨年のレッドブルRB15に今シーズン向けのアップデートを施したマシン。その戦闘力と信頼性は保証済で、実際、冬季テストでもしっかりとしたパフォーマンスを発揮していた。
問題はフェラーリ軍団、本体のフェラーリSF1000は外観からは目に見える大改造はなく、ほぼ現状維持。FIAと結ばれた条項で昨年のフェラーリPU(パワーユニット)の燃料問題に何らかの決着つき、今シーズンからフェラーリは若干のパワーダウンを余儀なくされたように思える。となればフェラーリには極めて苦しいシーズン、これはアルファロメオとハースにも共通する問題だ。
また、ルノーは今シーズン向けのPU開発に必要以上の力をつぎ込まず、来季からの新時代F1に向けての開発にPU関係のリソースが向けられることが考えられる。そうなると今季は車体とエアロ開発のみでシーズンを乗り切らなくてはいけない。
ルノーにとって今季は厳しいシーズンになりそうだが、エンジニアリングのリーダーに今シーズンからパット・フライが就任、これでチームの方向性が確保できることは間違いない。ドライバー面ではダニエル・リカルドはともかく、1年間のブランクがあるエステバン・オコンにはきついシーズンになりそうで、彼に大きなリザルトを期待するには若干無理がありそうだ。
トップから各チームの状況を考えると、ドライバーも昨年のランキングからそれほど大きく勢力図が変わるとも思えないが、そのなかでもレーシング・ポイント以上に面白そうなのがマクラーレンか。
マクラーレンは昨年から調子を上げ、今年はルノーPU搭載の最終年。カルロス・サインツJr.とランド・ノリスのコンビはF1界きっての仲良しコンビは、パフォーマンスの高さも相当なものだ。マシンを開発担当のジェームス・キーの指揮で産み出されたMCL34は結構、トップグループを掻き回す“暴れん坊”になりそうな予感がする。特にノリスはヤングドライバーの筆頭株として、どこまで育つか注目したい。
若手の注目ドライバーとしてはもちろん、テストでの低迷を乗り越えれば、フェラールのシャルル・ルクレールも期待されるのだが、これは開幕以後のフェラーリSF1000のでき次第だろう。
タイトル争いとしては最終的にはレッドブルのマックス・フェルスタッペンがどれほどメルセデスの二人、特にルイス・ハミルトンを脅かし続けらるか、その期待は限りなく膨らんでゆく。
今シーズン、ある意味、瀬戸際に立っているのがセバスチャン・ベッテル、キミ・ライコネン、ロマン・グロージャンなど。彼らは来シーズンの去就に向けても、活躍が気になる1年となりそうだ。
また、ホンダPU勢のアレクサンダー・アルボン、ピエール・ガスリー、ダニール・クビアトの3人も今シーズンの出来が生命線だ。彼らの活躍を期待したい一方、この3人の誰かが失速すれば、2021年は日本人ドライバーの可能性も考えられる。したがって、FIA-F2を走る松下信治・角田裕毅の若手ホンダドライバーたちの今シーズンもまた、F1に近づくための正に正念場と言って良いだろう。がんばれ、ニッポン!!