2020年シーズンで5年目を迎えたハースF1チームと小松礼雄エンジニリングディレクター。今年は成績の振るわなかった2019年シーズンの反省を活かして、何としても中団勢の上位争いに戻りたいところ。いよいよ目前に迫った開幕を前に、テストの手応えやチームの現状などを小松エンジニアがお届けします。
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2020年F1プレシーズンテスト(2/19〜21、2/26〜28)
#8 ロマン・グロージャン ベストタイム:1分17秒037(6日間総合13番手/C4タイヤ)
#20 ケビン・マグヌッセン ベストタイム:1分17秒495(6日間総合19番手/C4タイヤ)
2020年シーズンも、こちらのコラムをよろしくお願いします。今年は現行レギュレーションでの最終年、昨年にも増して激しい中団争いになると思うので、さらに面白いレースが増えると良いですね。もちろん、ハースとしてはその集団の前の方で戦えるように日々取り組んでいます。また大きくレギュレーションが変わる2021年仕様のクルマも並行して開発していかなければいけないので、凄い年になりそうです。
加えて、現在はコロナウイルスがヨーロッパ(特にイタリア)でも猛威をふるっており、中国GPが延期になったり、バーレーンGPも観客無しでの開催が決まったりと、影響が出ています。日本の状況もかなり大変な様ですが、なんとかF1として良いレースをして皆さんに少しでも明るい話題を届けられればと思っています。今シーズンもよろしくお願いします!
さてプレシーズンテストを終えての率直な感想としては、「相変わらず中団勢は拮抗しているな……」という感じです。テスト日数も昨年の8日間から6日間に減り、やることが多く大変でしたが、結果としてはとても実りのある6日間にすることが出来たと思います。
2019年のクルマは予選である程度速くても決勝レースではタイヤがもたないということが大きな問題だったので、その反省点が2020年のクルマの設計や空力面に活かされています。とはいえ見た目がガラッと変わったわけではないので、外からはわかりづらいかもしれませんね。
それでも、フロントウイングが変わったのはすぐに目につくと思います。昨年のコンセプトは行き詰まっていたので、かなり早い段階でコンセプトの方向転換は決めていました。その他もバージボード、冷却のレイアウト、フロアなどすべて見直しました。
テスト前の1月・2月にはシミュレーターで走り込んでかなりのデータを採りました。そして実際に走り出してみると、クルマの感触はシミュレーターで作業していた時の想像通りものだったので、先ずは良い出だったと思います。ハースは何十年も活動しているチームではないので、シミュレーターも既に証明されたものがあるわけではく、ダラーラと共同で開発を行っているのです。これを比較的短い期間で新車準備に使えるレベルまでもってこれたことは大きな収穫です。
シミュレーターというのは、下手をすると凄くお金をかけてもテレビゲームの域を出ないことがあります。ですからウチのようなチームがやる場合には特に気を付けないといけないのですが、今のところ順調に進歩してきています。この開発はこれからも実走と並行してどんどん進めていきます。
バルセロナテストでは、基本的にはデータ収集に力を入れました。とにかく去年の反省からプログラムを見直して、昨シーズン中にわかったことを今年はシーズン前に理解するため、『VF-20』を丸裸にするようなテスト計画を組みました。
もちろん、冬ですので路面温度は低いのですが、それでも1日平均10セットの新品タイヤを使って走り、クルマの特性と感度を良いレベルで把握することが出来ました。レース週末中はタイヤの数や走行時間にかなり限りがあるので、なかなかこの様なテストをすることはできないので、この段階でのデータ収集が後々とても重要になってくるのです。
また新型コロナウイルスの影響も2回目のテストから出始めました。フェラーリは予定どおり全員バルセロナに来ましたけど、ダラーラやブレンボはバルセロナ行きを取りやめました。とは言っても、同じダラーラのオフィスで仕事をしているハースの社員は来ました。ダラーラで設計に関わっているメンバーはなかなか実走の現場に来る機会がないので、バルセロナに来れなかったのは残念でした。
またテストに来て空力解析をやっているイギリス人のなかにはイタリア在住のスタッフもいるのですが、彼らはテスト後はイタリアに戻らず、イギリスに来てバンベリーの事務所で働いています。実際、その後イタリアでは更に規制がかけられる地域が増えて来ています。