2020年3月13日(金)午前10時10分、F1統括団体FIAと商業権保持者としてのF1株式会社、そしてオーストラリアGP主催者AGPCは連名でオーストラリアGPの中止を発表した。今シーズンの開幕となる金曜フリー走行の開始まで2時間を切るというぎりぎりのタイミングだった。
すでにサーキットには午前9時のカーフュー解禁と同時にチームスタッフが入場し、ファンも各ゲートで開門を待っていた。
そもそも3月11日水曜日の時点では、オーストラリアは新型コロナウイルスの感染が拡大している中国や韓国、イラン、イタリアからの入国は制限していたが(過去14日間の渡航歴があれば原則として入国拒否)、日本からは顔認証自動ゲートでの質問項目に「いいえ」と答えるだけでいつも通り何の制限もなく入国できた。
イタリアは自国でも出入国制限が始まったが、F1のチームメンバーが出国するのを見計らったタイミングであり、オーストラリア側の入国制限もそれに合わせたタイミングになっていた。
サーキット内のファンゾーンやパドックの各所には、水曜になって多数のアルコール除菌剤が持ち込まれて設置され、感染対策と症状が出た際の対処に関するガイダンスもあちこちに貼られていた。
しかし水曜のパドックの雰囲気はいつも通りで、バルセロナ合同テストの際と同じように「うがい、手洗い、アルコール除菌」といった基本的な感染対策がとられているだけだった。マスクに関しては、日本とは違い欧米では「病人がするもの」という認識があるため、混乱を防ぐためかAGPCや地元保健当局からのガイダンスにも「健康な人はマスクはしないこと」と明記されており、パドック内でマスクをしているのはごく僅かでしかなかった。これが飛沫感染の拡大に繋がったかどうかは分からないが、主催者側の感染予防に対する努力は感じられたものの、そのスタンスが充分なものであったかどうかは疑問が残る。