F1には、シリーズを運営するオーガナイザーを始め、チーム代表、エンジニア、メカニック、デザイナー、そしてドライバーと、膨大な数のスタッフが携わっている。この企画では、そのなかからドライバー以外の役職に就くスタッフを取り上げていく。
第3回目となる今回取り上げるのは、スクーデリア・アルファタウリのチーム代表を務めるフランツ・トスト。日本とヨーロッパの違いを理解し、勤勉に仕事をこなす叩き上げのチーム代表を紹介する。
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90年代あたりまでのF1にはチーム代表という言葉は存在しなかった。なぜなら、自らチームを立ち上げたオーナーが、現場のボスとして指揮を執っていたからだ。その後F1のビジネスが大きくなるにつれて、チームが投資の対象となって売買されるようになった2000年代に入ると、オーナーはお金と口を出すだけとなり、現場をまとめる役職が現れるようになる。それがチーム代表だった。
このチーム代表には、大きく分けて3つある。ひとつは元レーシングドライバー。ふたつ目は敏腕ビジネスマン。そして、もうひとつが、いわゆる“叩き上げ”のレース屋だ。
今年、トロロッソからチーム名を変更したアルファタウリのチーム代表を務めるフランツ・トストは、下積み時代にさまざまな苦労を経験し、腕を磨いてF1のチーム代表となった叩き上げタイプである。
トストのレース人生は、母国であるオーストリアから始まった。フォーミュラ・フォード、F3などに参戦した後、レッドブルリンク(当時はエステルライヒリンク)で活動していたウォルター・レヒナー・レーシングスクールでインストラクターとして、レースの第二の人生をスタートさせた。
1993年にはミハエル・シューマッハーのマネジメント担当を務めていたウィリー・ウェバーのマネジメント会社に入り、ミハエルの弟のラルフ・シューマッハーが日本の『フォーミュラ・ニッポン』に参戦したときには、サポート役として1年間、日本で生活していた経験を持つ。
F1で仕事を開始したのは2001年。F1に進出していたBMWからトラックオペレーションマネージャーを任された。その後、2006年にディートリッヒ・マテシッツがレッドブルに続いてミナルディを買収してトロロッソが誕生すると、マテシッツがチーム代表として白羽の矢を立てたのは、BMWで黙々と仕事をこなしていたトストだった。