F1には、シリーズを運営するオーガナイザーを始め、チーム代表、エンジニア、メカニック、デザイナー、そしてドライバーと、膨大な数のスタッフが携わっている。この企画では、そのなかからドライバー以外の役職に就くスタッフを取り上げていく。
第4回目となる今回取り上げるのは、スクーデリア・フェラーリのチーム代表を務めるマッティア・ビノット。フェラーリにおいてエンジニア出身のチーム代表が誕生するのは久しぶりのこと。エンジニアからの信頼も厚く、3カ国語を操り冷静に業務を遂行するチーム代表をご紹介する。
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10人いる現在のチーム代表の中で、マッティア・ビノットがほかのチーム代表と異なるのは、彼だけがF1のエンジニア経験者ということだ。
スイス連邦工科大学のローザンヌ校で機械工学の学士号を取得した後、両親の母国であるイタリアのモデナ・レッジョ・エミリア大学で自動車工学の修士課程を修了し、1995年にスクーデリア・フェラーリ(フェラーリのレース部門)に入社した。
最初に配属されたのは、F1のテストチームのエンジン部門。1997年からレースチームに配属され、エンジンのレースエンジニアとして、エディ・アーバイン、ルーベンス・バリチェロ、ミハエル・シューマッハーの担当を歴任した。
2005年にエンジン部門のチーフエンジニアに昇格。2010年から2012年まで、チーフ・トラック・エンジニア(サーキットでのエンジニアの中のトップ)を務めた後、2013年は1年間だけトロロッソのエンジン部門のマネージャーを務めた。
2014年にフェラーリのエンジン部門に戻り、エンジンと電子制御の副ディレクターに就任。2015年からフェラーリ・パワーユニットのリーダーとして、その年からスタートしたマウリツィオ・アリバベーネ体制をサポートしてきた。
このように、ビノットはフェラーリ入社後、一貫して内燃機関の技術畑を歩んできたエンジニアだったが、2016年に転機が訪れる。当時フェラーリでテクニカルディレクターを務めていたジェームズ・アリソンの妻が急逝。イギリス出身のアリソンはイギリスに住む残された家族のためにチームを離れる決断を下したのだ。
チームの技術的なリーダーがシーズン半ばで離脱するという緊急事態にフェラーリが採った選択は、ビノットを抜擢するという大胆人事だった。さらに2018年末に就任以来タイトルを取り損ね続けていたアリバベーネが事実上解任されると、2019年からチーム代表に就任。ついに、伝統あるスクーデリア・フェラーリのF1部門のトップの座に就いた。