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F1 ニュース

投稿日: 2020.05.29 13:50
更新日: 2020.05.29 13:52

“モナコ・マスター”セナが起こした魔法(2)トランス状態で走った伝説のラップ「もはや運転しているという意識はなかった」

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F1 | “モナコ・マスター”セナが起こした魔法(2)トランス状態で走った伝説のラップ「もはや運転しているという意識はなかった」

 伝説のF1ドライバー、アイルトン・セナはモナコGPで圧倒的な強さを誇っていた。10回出場したなかで1987年、1989年、1990年、1991年、1992年、1993年の6回優勝を達成、これは歴代最多記録だ。ポールポジションも5回獲得しており、1994年のサンマリノGPで命を落とさなければ、その記録をさらに伸ばしていたことだろう。本来モナコGPが開催されるはずだったいま、“モナコ・マスター”と呼ばれるセナが見せた魔法を振り返ってみたい(全2回)。

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 1988年モナコでのセナの『トランスラップ』については語りつくされた感はあるが、それでもこれは何度でも読む価値があるストーリーだ。ジェラルド・ドナルドソンが記した『Grand Prix People』のなかに、セナのこのような言葉が記されている。

「1988年のモンテカルロの最後の予選セッションでのことだ。僕はすでにポールを確実なものにした後も、タイムをどんどん削っていた。1周走るごとに、さらに速くなっていった。最初は単にポールポジションを確保するに足るタイムだったが、そこから0.5秒削り、1秒削り、といった具合にひたすらタイムを更新し続けた。そうしてふと気づくと、他の人たちより2秒も速いタイムを出していた。同じクルマに乗るチームメイトも含めてだ。その時、僕のなかに『クルマを運転している』という意識がないことに気付いた」

アイルトン・セナ(マクラーレン)
アイルトン・セナ(マクラーレン)

「本能だけで走っていた。僕だけが別の次元にいたんだ。トンネルのなかを走っているような感じだった。サーキット全体がトンネルのなかにある感じで、そこをひたすら走り続けた。とっくに限界を超えていたが、それでもまだタイムを見つけ出すことができた」

「すると突然、何かに叩き起こされたような感じになり、目が覚めた。自分を取り巻く空気が普段とは違うことに気付いた僕は、すぐにペースを落としてピットに戻った。その日はもう走る気にはならなかった」

「自分の理解をも超えた状態で、そうなっていることに恐ろしくなった。あんなことはめったに起こらない。でも、自分を守るために重要なことなので、そういう経験を大事にし、忘れないようにしている」

■得意のモナコでのまさかのクラッシュが精神面の強さをもたらした


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