いよいよ開幕を迎える2020年シーズンのF1。新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあって長いブランクを挟むことになったが、ようやくレースが始まる。今年はホンダがアストンマーティン・レッドブル・レーシングにパワーユニットを供給して2年目のシーズンとなり、タイトル獲得の期待がかかる。
オーストリアGPには『スペック1.1』を投入することを決めているホンダだが、メルボルンでのレースが中止となってから、いったいどのような準備をしてきたのか。また、厳しい安全対策を実施している現場の状況はどうなっているのか。ホンダF1の田辺豊治テクニカルディレクターに話を聞いた。
──────────
──オーストリアに来る前にイモラとシルバーストンでテストを行ったはずですが、ここで使用されたパワーユニット(PU)は、開幕戦で使われる最新仕様だったのでしょうか。
田辺豊治テクニカルディレクター(以下、田辺TD):いえ、本来の開幕戦オーストラリア仕様でした。いわゆるスペック1をベースにしたものですね。今週末のレースでは、予定通り最新のスペック1.1を投入します。
──信頼性とパフォーマンスの両方を向上させたものと聞いています。具体的には、エンジン本体に改良を加えたのでしょうか。
田辺TD:基本的には、ICEと呼ばれるエンジン本体ですね。コロナでのシャットダウンの影響もあって、何でもかんでも手を付けるというわけにはいかなかった。できる範囲で細かいところを、きちっと仕上げてきたという感じです。
──イモラ、シルバーストンで最新仕様を試さなかったのは、やりたいけどできなかったのか、それとも試す必要はないという判断だったのでしょうか。
田辺TD:両方ともあくまでチームのフィルミングデーという名目でしたから、本格的なテストをする環境ではなかった。走行距離もたった100kmですしね。最新PUの基数自体もまだ限られたものですし、ベンチで確認すれば十分だという判断でした。
──とはいえ信頼性確認ということなら、実際にサーキットを走らせたかったのではないでしょうか?
田辺TD:さっきも言ったように、100kmですからね。走って何が言えるか。初期不良がわかる程度だと思います。レースで使うPUそのものを持ち込んで走らせたら、安心感は増すでしょうけどね。
ただテストをする際のいろいろな制限が多く、スペック1に留めました。それでも基本的な作動確認はできたし、車体も含めたマシンパッケージ全体のバランスにまったく問題ないことも確認できました。
──今週末、少なくとも信頼性の不安はまったくないということですか?
田辺TD:3月のメルボルンも結局1周も走れず、2月のバルセロナテスト以降まったく走っていなかったわけです。ここまで長いブランクのあとでのぶっつけ本番のレースというのは、誰も経験していない状況です。そこは例年の開幕戦とは、大きく違う。とはいえ現場での準備の進め方という点では、特に違いはないですね。