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F1 ニュース

投稿日: 2020.07.07 12:14
更新日: 2020.07.08 08:10

【中野信治のF1分析第1戦】予選で攻めきれないフェルスタッペン。アルボンとハミルトン接触のドライバー心理

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F1 | 【中野信治のF1分析第1戦】予選で攻めきれないフェルスタッペン。アルボンとハミルトン接触のドライバー心理

 3か月遅れながら、ついに始まった2020年のF1シーズン。王者メルセデスに対して、対抗馬最右翼のレッドブル・ホンダはどのような戦いを見せるのか。レースの注目点、そしてドライバーやチームの心理状況やその時の背景を、元F1ドライバーで現役チーム監督、さらにはF1中継の解説を務める中野信治氏が深く掘り下げてお伝えする。とにかく話題の多かった開幕戦、今回の第1戦はメルセデスとレッドブル・ホンダにフォーカスして、両者の戦いを振り返る。

  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆

 今回のF1開幕を迎えるにあたって、コロナの影響で十分な準備ができないままのスタートとなりましたが、まずはF1関係者の努力、そしてファンの方の応援のおかげでこの開幕戦まで漕ぎつけられたこと、レース、F1に関わる者として本当にありがたいことです。もちろん、ファンにとっても開幕できたことはうれしいことですし、本当に関係者の方々、そしてファンのみなさまに感謝したいです。

 そして、こういう形でいつもと違った形でスタートした開幕戦。開幕戦というのは基本的にアクシデントやトラブルなど、いろいろなことが起こりますが、そう考えれば、第1戦のレースはある意味、開幕戦らしいレースでしたね(苦笑)。

 予選ではメルセデスの速さが際立っていました。春先のウインターテストの時から安定した速さがあるのはタイムを見て感じていたので、今年もメルセデスは強いだろうとは思っていましたが、そのウインターテストからコロナの影響で延期されて走れなかった期間、おそらくメルセデスはシミュレーターシステムなどを使ってセットアップや空力、足回りの開発を進めてきたと思うんですよね。

 その3カ月の期間がウインターテストの時以上の差を作ってしまったのかなと思いました。走れなかった期間があったことで技術力、最先端のシミュレーションシステムなどがうまく機能しているメルセデスとライバルチームの差が広がってしまったのかなという印象を受けました。

 一方、レッドブル・ホンダを含めた2番手以下のチームは勢力関係がごちゃごちゃで(苦笑)、絞って話すのが難しいくらいの状況でしたよね。

 その中でもやはり、マックス・フェルスタッペンとレッドブル・ホンダに関しては戦い方という点でも予選Q2でミディアムタイヤを選択するなど他のチームとは違いましたよね。

 レースウイークに入ってからの練習走行を見て、レッドブル陣営はメルセデスとの差をある程度、理解して、「どういう戦い方をすれば速さのあるメルセデスに対抗できるのか」というポイントにターゲットを絞って、予選Q2である程度のリスクを取った。そこは戦略のうまいレッドブルらしいなと思いました。

 あれだけの速さがあるメルセデスも、予選Q2でソフトタイヤ以外の選択もあったと思いますし、ミディアムタイヤでもQ2を突破できたという声が多いとは思いますが、もしかしたらメルセデスはミディアムタイヤとの相性が良くなかったのかもしれません。

 結果的にメルセデスはソフトタイヤとハードタイヤで今回のレースを戦ったわけですが、ソフトとハードというのは一番コンサバな選択です。チームも膨大な量のデータを基に戦略を考えているなかで、ソフトとハードの選択は自分たちのなかで一番リスクも少ないという計算の元での戦い方になったのかなと見えました。

 そういう意味では、メルセデスもレッドブルもそれぞれの王道というか、今ある武器/パフォーマンスのなかでベストの作戦を選んで進めたのかなと思います。

 レッドブル・ホンダとフェルスタッペンについてはもうひとつ、予選の走りを見ていても、コーナーのアプローチなどまだまだ攻め切れていない部分が見られました。練習走行1回目、2回目にもスピンをしていて、ウインターテストの時から出ているマシンの症状(若干ピーキーなマシン挙動)だと思いますが、それが今回のオーストリアでも出た形なので、クルマはそこまで改善はされていないのかなと。一発の速さに苦しんでいる印象がフェルスタッペンのドライビングから感じました。

 予選ではフェラーリのパフォーマンスが良くなかったのも予想外でした。ここまで良くないというのはビックリでしたね。パワーユニット(PU)/エンジンがパワー不足という声も聞こえてきましたし、実際、直線スピードの数字を見ても最下位に近いレベルですし、同じフェラーリPUを搭載するハース、アルファロメオのパフォーマンスもイマイチでした。

 予選でのフェルスタッペンとルクレールの差がコンマ4〜5秒。このオーストリアの短いコースでのコンマ4〜5秒は本当に大きな差ですから、これから距離が長いサーキット、PU全開率が高いサーキットに行った時にはもっと差が広がってしまうことを考えると、ちょっと心配になってしまいます。やはりこれまでの歴史的にも、フェラーリが速く走ってくれないとF1は盛り上がりずらいですからね。

■さまざまな視点で見えるレース終盤のアルボンとハミルトンの紙一重の攻防戦


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