2020年の第1戦オーストリアGPは想像を絶するほど大荒れの展開となったが、同じレッドブルリンクで行なわれる第2戦シュタイアーマルクGPはそんなレースにはならないかもしれない。
開幕戦は4カ月ぶりの本格走行で、ドライバーもチームもまだリズムを掴み切れていないという面があった。それだけではなく、そもそも2020年型マシンはまだ開幕前テストで走っただけであり、それも従来より25%も少ない6日間しかテストができていない状態だ。
そんなマシンを、いきなり全開率が72%にも達する高速サーキットで走らせる。さらには、ダブルカーブ(2段縁石)を200km/h以上の速さで長時間走ることで、サスペンションには激しい振動と負荷を受ける。車体全体に複雑な周波数のオシレーション(振動)が起きる。
そんなさまざまな要素が絡み合って、開幕戦ではトラブルが多発し9台がリタイアという近年では珍しい大荒れのレースとなった。
セットアップ面でも、まだ6日しか走っていないクルマだけに金曜の段階では仕上がりきっておらず、金曜から土曜にかけて大きく改善させたクルマや、日曜になっても挙動が不安定なままのクルマも少なくなかった。それも荒れたレースになった要因のひとつと言えそうだ。
しかし、どのチームも開幕戦の3日間で得たデータを徹底的に分析してこの第2戦のレース週末に臨む。セットアップ向上もトラブル対策も果たされるのは当然で、さらには同じサーキット、同じタイヤで走るだけにレース戦略とタイヤマネージメントもある程度の“正解”が見えた状態でのレースとなる。
つまり、それだけマシン本来のポテンシャルが引き出された状態での戦いになり、例年以上に早く、開幕2戦目から各チーム各ドライバーの実力差が白日の下に晒されることになる。
そんな中で、開幕戦で圧倒的な速さを見せたメルセデスAMGに対し、レッドブル・ホンダはどこまで肉薄することが出来るのか?
ソフトタイヤのムービングを抑えられず高速コーナーを速く走ることのできなかったマシン挙動問題を、セットアップでどこまで解決することができるのか?
開幕戦に1セットしか持ち込むことが出来なかった新型フロントノーズを、2台ともに投入しマシン開発の新たな考え方に基づいてセットアップを煮詰めることが出来るか?
予選でつけられた0.5秒もの差を、どこまで縮めることが出来るかが最大の注目ポイントだ。
それができれば、決勝ペースでは開幕戦でもマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)が充分に速さを見せていただけに、優勝争いのチャンスも十分に見えてくる。アレクサンダー・アルボン(レッドブル・ホンダ)はレース終盤に優勝のチャンスが見えていたとはいえ、それはセーフティカー導入とタイヤ戦略によるもので、全体的なレースペースはメルセデスAMG勢との争いというよりも中団トップ勢との争いに近かっただけに、アルボン自身のドライビングも新型ノーズとともにどこまで進化させられるかが重要だ。
そしてもちろん、開幕戦で2台ともに見舞われてしまったトラブルをきちんと克服することが出来るかどうか。