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F1 ニュース

投稿日: 2020.07.16 06:38
更新日: 2020.07.16 06:41

【中野信治のF1分析第2戦後編】ハミルトンに酷似するノリスのスピード感覚。ワークス勢を襲うピンク・メルセデスの脅威

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F1 | 【中野信治のF1分析第2戦後編】ハミルトンに酷似するノリスのスピード感覚。ワークス勢を襲うピンク・メルセデスの脅威

 3か月遅れながら、ついに始まった2020年のF1シーズン。王者メルセデスに対して、対抗馬最右翼のレッドブル・ホンダはどのような戦いを見せるのか。レースの注目点、そしてドライバーやチームの心理状況やその時の背景を元F1ドライバーで現役チーム監督、さらにはF1中継の解説を務める中野信治氏が深く掘り下げてお伝えする。前回の第2戦の雨の予選に続いて、後編はメルセデスのワンサイドゲームになった決勝の分岐点、そして中野氏が注目する次代を担う若手F1ドライバーをピックアップします。

  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆

 第2戦の決勝に関しては開幕戦の答え合わせのような、ある意味、今のそれぞれのクルマの能力の現状、そして勢力図を知るうえでわかりやすいレースになりましたよね。

 メルセデスがレースでも速くて、レッドブル・ホンダとしてはノーミスだったと思いますが、今回はメルセデスに勝つにはノーチャンスでしたね。レッドブルのクルマはメルセデスに比べて明らかにピーキーな挙動で、第1スティントに装着したソフトタイヤでは厳しいなと思っていました。

 レッドブルが逆転できるチャンスとしては、第2スティントでミディアムタイヤを装着したときだと見ていました。もしかしたらメルセデスよりもレースペースが速くなる可能性があるかなと思っていましたので、第2スティントの走り出しのお互いのタイムでレースの勝敗が決まると予想していました。

 レッドブルもそれを理解していたか、(マックス)フェルスタッペンを早めにミディアムタイヤに換える作戦を採りました。それでも(ルイス)ハミルトンもすぐにフェルスタッペンに合わせてきて、しかもハミルトンのペースがミディアムタイヤでも速かった。この時点である意味、今回のレースの勝敗は見えました。そして、両者のクルマのポテンシャルの差がまだ大きいということも証明されてしまいました。今回の差は、さすがにドライバーの能力ではいかんともしがたい差です。

 その状況でも、レースでのフェルスタッペンの走りは凄まじかった。2番手を走行しながらトップのハミルトンに序々に離されていく展開でしたが、僕は実際のクルマのポテンシャル差は、あのタイム差以上にあったと思います。それくらい、フェルスタッペンは本当にあのピーキーなクルマを毎周毎周、予選のアタックのようにものすごい集中力とテクニックで走らせていました。

 チームメイトの(アレクサンダー)アルボンも決して遅いドライバーではないと思いますし、レッドブルのクルマが若干、フェルスタッペン寄りなのかなと思いますので一概には比べられないですけど、アルボンとフェルスタッペンのラップタイムには差がありました(第1スティントではフェルスタッペンが1分8秒台後半、アルボンが1分9秒台前半)。

 フェルスタッペンはピーキーなクルマの特性をゼロカウンターからカウンターを当てるギリギリのところ、クルマがスピンしないギリギリのところでステアリングとスロットルをコントロールして毎周同じように攻め続けていました。これはなかなかできることではないですし、改めてフェルスタッペンのすごさを見せつけられました。

 フェルスタッペンは予選のように走っているので当然、タイヤには厳しくなるので、それぞれのスティント後半は苦しくなってしまう。最後は(バルテリ)ボッタスにも逆転されてしまいましたが、その抜かれるところでもフェルスタッペンの意地を見ましたし、どういう状況になってもフェルスタッペンはアピールするところはきっちりアピールするし、その実力、巧さも見せました。

 オーストリアのコースは高低差も大きくて特にリヤのトラクションが厳しくなりやすいのですが、その中でもフェルスタッペンのクルマはどんどんオーバーステア気味になって、中高速コーナーが厳しくなっていきます。他のタイヤにやさしいコースだとフェルスタッペン、そしてレッドブルはもう少し勝負できたのかなと思います。

 優勝争い以外でも、今回のレースは中団勢の戦いがとても面白かったですよね。なんと言っても、まずはピンク・メルセデス(笑)。(レーシングポイントの今季型マシンが昨年のメルセデスのマシンの外観に酷似していることから、関係者の間では通称ピンク・メルセデス)

 今年はフェラーリの調子がよくないので、メルセデス、レッドブルに続くチームとして、フェラーリに代わってピンク・メルセデスのようなチームが出てきて、見ている側としてはとても面白いですよね。ピンク・メルセデス、(セルジオ)ペレスが連続でファステストタイムを出していましたが、レース後半のラップタイムはトップのハミルトンが抑えていたとはいえ、メルセデスと近いタイムでしたからね。

 ペース的にはペレスはアルボンの前に出る速さでしたし、レースで追い上げて追い上げてタイヤを使ってのタイムなので、すごいですよね。ただ速いだけでなくてピンク・メルセデスはタイヤにやさしいクルマと言えますし、ペレスもタイヤマネジメントが上手いドライバーですので、その良さがレースで出ていましたよね。

 一方、ペレスは雨の予選で17番手でしたが、おそらくあのクルマはウエットのセットアップを全然煮詰め切れていないのだと思います。チームはまだクルマの特性を理解し切れていなくて、言い換えれば、あのピンク・メルセデスはこれからまだまだ速くなるポテンシャルがあると思っています。

 これからもタイヤに厳しいサーキットではピンク・メルセデスのコンビ、特にペレスはかなり面白い存在になるのではないでしょうか。

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