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F1 ニュース

投稿日: 2020.07.23 13:28

2014年モナコGP、可夢偉vsビアンキがもたらした運命の分かれ道【日本のレース通サム・コリンズの忘れられない1戦】

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F1 | 2014年モナコGP、可夢偉vsビアンキがもたらした運命の分かれ道【日本のレース通サム・コリンズの忘れられない1戦】

 スーパーGTを戦うJAF-GT車両見たさに来日してしまうほどのレース好きで数多くのレースを取材しているイギリス人モータースポーツジャーナリストのサム・コリンズが、その取材活動のなかで記憶に残ったレースを当時の思い出とともに振り返ります。

 今回は2014年のF1モナコGPをピックアップ。翌年の分配金を賭けたバトルは白熱の展開へ移ります。その主役は当時、ケータハムからF1に参戦していた小林可夢偉と、マルシャの命運を握っていたジュール・ビアンキでした。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 レースがリスタートした際、キミ・ライコネン(フェラーリ)はシケインで可夢偉にぎこちない動きを仕掛けたが、コーナーをカットしなければならなくなり、ポジションを返すことになった。

 2007年のF1ワールドチャンピオンでさえも、ケータハムを抜くのに苦戦している。この興奮するバトルを、私はペリエ缶を片手に手書きでメモをとりながら見ていた。

 翌周、可夢偉はルノーエンジンを積んだCT05のリヤのコントロールを失ったが、かろうじてライコネンに衝突することは避けることができた。

2014年F1モナコGP ビアンキが可夢偉の背後に迫るきっかけはライコネンとのバトルにあった。
2014年F1モナコGP ビアンキが可夢偉の背後に迫るきっかけはライコネンとのバトルにあった。

 しかし、1周前のライコネンのように可夢偉はシケインをカットしなければならず、結果としてスイミングプールのセクションの出口で、ライコネンにポジションを明け渡すことになってしまった。

 これによりライコネンの後ろを走行していたビアンキに道が開かれた。ビアンキは私の目の前のラスカスで可夢偉のインに飛び込んでいく。2台のマシンはホイールをぶつけあった。

 サイド・バイ・サイドになった2台は再度、ホイールをぶつけあった。可夢偉をわずかにワイドに押し出すと、ビアンキはアクセルを踏み込んでコーナーを出たが、今度は自身のリヤがすべり、可夢偉のマシンに3回目の衝突をし、明らかにフロアにダメージを負わせた。

 これはすべて私の目の前で行われた出来事だ。圧巻の見ものであっただけでなく、私はこの時点で彼らがポイントを獲得できるチャンスがあることを知った。ポイントは何百万もの価値に繋がり得る。

 ビアンキは13位まで順位を上げていたが、12位になれるチャンスがやってきた。ジャン・エリック・ベルニュ(トロロッソ)がピットストップから危険なリリースを行ったためにペナルティを科されたのだ。

 一方、マシンにダメージを負った可夢偉はロマン・グロージャン(ロータス)と、チームメイトのマーカス・エリクソンに追い抜かれ、後退していた。

 この時点ではザウバーが非常に順調に見えた。エステバン・グティエレス(ザウバー)は9位で、戻ってきたライコネンに抜かれたとしても、フェリペ・マッサ(ウイリアムズ)がピットストップ後に順位を落としていたので、重要なポイント獲得のチャンスがある。

 それから数周後、バルテリ・ボッタス(ウイリアムズ)がメルセデスエンジンにしては珍しいトラブルによってリタイアを喫し、グティエレスはポイント圏内でのフィニッシュが約束されたかに見えた。

 しかし、私のすぐ目の前で彼はラスカスのイン側のバリアにぶつかり、レースをリタイアした。これによりビアンキは10位に上がり、ポイント圏内に入った!

 ビアンキが、議論を呼ぶようなポイント圏内入りを果たして間もなく、ケビン・マグヌッセン(マクラーレン)がヘアピンの動きで判断ミスをしたため、ライコネンはフロントウイングを損傷する。

 2台のマシンはしばらく停滞し、ビアンキは8位まで順位を上げたところでレースが終了した。ビアンキには5秒ペナルティが課されて9位に落ちはしたものの、マルシャチームは気にせず、まるで彼らがレースで優勝したかのように喜んでいた。

2014年F1モナコGP、見事9位入賞を果たし、貴重なポイントを得て喜ぶマルシャF1チーム。
2014年F1モナコGP、見事9位入賞を果たし、貴重なポイントを得て喜ぶマルシャF1チーム。

■分配金が天と地ほどの差を2チームに与えた


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