レースを愛してやまないファンの方々へ
autosport web Premiumが登場。

詳細を見る

F1 ニュース

投稿日: 2020.07.26 06:30
更新日: 2020.07.26 06:31

【中野信治のF1分析第3戦】もはや別カテゴリーのメルセデス。見習いたいフェルスタッペンとマグヌッセンの図太さ

レースを愛してやまないファンの方々へ
autosport web Premiumが登場。

詳細を見る


F1 | 【中野信治のF1分析第3戦】もはや別カテゴリーのメルセデス。見習いたいフェルスタッペンとマグヌッセンの図太さ

 3か月遅れながら、ついに始まった2020年のF1シーズン。王者メルセデスに対して、対抗馬最右翼のレッドブル・ホンダはどのような戦いを見せるのか。レースの注目点、そしてドライバーやチームの心理状況やその時の背景を元F1ドライバーで現役チーム監督、さらにはF1中継の解説を務める中野信治氏が深く掘り下げてお伝えする。第3戦のハンガリーGPではマックス・フェルスタッペンが2位表彰台を獲得したものの、メルセデスのさらなる強さが目立った展開となった。そのなかでも光ったフェルスタッペンのパフォーマンス、そして混乱のなかで目立ったケビン・マグヌッセン(ハース)のパフォーマンスが目にとまった。

  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆

 F1第3戦のハンガリーGPですが、まずは予選で気になったのが、Q2でミディアムタイヤのメルセデスにソフトのマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)がまったく敵わなかったことですね。レッドブルは前回のオーストリアよりもハンガリーのほうがもう少しメルセデスに接近できるのかなと思っていたのですが、思った以上にクルマのピーキーさが消えていなかったように見えました。

 ハンガロリンクは路面が低μ(ミュー)で滑りやすく低中速コーナーが続くサーキットなので、きれいなダウンフォースをたくさん使えるサーキットではありません。そういった面で、レッドブルはクルマのピーキーさというものが、さらに大きく出てしまったのかなと思います。

 予選でフェルスタッペンは「アンダー(曲がらない)」ということも言っていましたが、あの挙動はアンダーだけではないですよね。全体的にクルマのグリップが不足しているように僕は見えました。あとは低ミュー/路面のミューが低いところでのマシンのグリップの出方が、ちょっと良くないなあと僕は感じました。

 昨年までのレッドブルは硬めのタイヤでも速かったですよね。硬いタイヤでも速さを見せていたので、ミューの低いサーキットでも速いのかなというイメージができたのですが、その良いイメージが、今は鳴りを潜めてしまっていることが予選を見ていて気になりました。

 車体だけでなく、パワーユニット/エンジンのドライバビリティに関しても見えない部分ですが、ホンダはメルセデスに比べて、もしかしたら馬力を掛けるあまりにドライバビリティが犠牲になっている部分があるかもしれないです。メルセデスはもともと馬力は出ていましたから、ハンガロリンクでは馬力を若干落としてでもドライバビリティを重視したセッティングをしている可能性はありますよね。

 小回りで低中速コーナーが多いコースレイアウトのハンガロリンクでは、ドライバビリティはすごく関係性が強い要素になります。それは予選一発の1周のタイムだけではなく、トルクの出方、トラクションの掛かり方はタイヤを守るという面でも非常に重要なので、決勝レースの方が大きな要素になります。一発の速さや予選タイムの出方に関しては、今回はトラクションではなく、また別の話なのかなという気がします。

 決勝はメルセデスが硬いタイヤでも、とにかく速かったですね。2019年までのメルセデスは硬いタイヤを履くとマッチングが悪いのかタイムが落ちてしまって、そこで硬いタイヤで速さを見せるレッドブルがうまく追い付くという印象がありました。それが2019年シーズンのレッドブルの良かった面ですが、2020年はその良かった部分が影を潜めて、逆にメルセデスの弱点だった硬いタイヤでも速さを出せるので、メルセデスは隙がない状態になっていますね。

 そのあたりがメルセデスというチームの強さであり、開発能力なんだなと感じます。もちろん見える部分の空力だけではなくマシン下面、そしてサスペンションジオメトリーやそれらを利用したセッティングなども含めて、低速域でもきちんとダウンフォースやメカニカルグリップを発生させている。メルセデスの低速域のグリップは昨年よりも増しているように感じます。

 その上で、前回の第2戦のときにもお話した、(ルイス)ハミルトンの理想的なドライビング。前回は「ハミルトンのドライビングはカートの乗り方のよう」と抽象的に表現しましたが、この表現はもちろん、感覚的なものです。読者のみなさまからもご質問が多かったようですが、これはなかなか伝えるのが難しい(笑)。

 改めてお伝えしますと、コーナーの進入から出口に向かってクルマの向きを変えるとき、向きを変えるタイミングが他のドライバーよりも若干、早いタイミングで変えているイメージなんですよね。それによってアクセルオンが早くできるし、コーナリングでもどちらかというとフロントタイヤのグリップに頼るわけではなく、フロントも使いつつリヤタイヤの外側を上手く使えるようになります。

■F1ドライバーの究極的ドライビングと、スタート前のフェルスタッペンのクラッシュとその後の振る舞い

マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)
2020年F1第3戦ハンガリーGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)

関連のニュース

F1 関連ドライバー

F1 関連チーム