2020年F1第5戦70周年記念GPでは、レッドブル・ホンダマックス・フェルスタッペンがタイヤ戦略を成功させて、今シーズン初優勝を飾った。ホンダF1の山本雅史マネージングディレクターは今回の優勝について、「土曜日のストラテジーに尽きる」と感じているという。
まだメルセデスに敵わない部分があると認めつつも、山本マネージングディレクターは、このチームの総合力があれば優勝争いに割って入ることができると、今後に向けても自信をのぞかせた。
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──まずは、今シーズン初優勝おめでとうございます。
山本雅史マネージングディレクター(以下、山本MD):開幕戦では2台そろってリタイアしましたが、その後はマックス(・フェルスタッペン)が連続して表彰台に上がっていました。
先週の第4戦イギリスGPでは、あと一歩というところで2位に終わりましたが、しっかりと検証して今週の第5戦70周年記念GPに備えてきました。その結果、今シーズン初優勝できたことは、本当に素晴らしいと思っています。
私の所感ですが、今週は先週と違って、金曜日から特にマックスが落ち着いてセッションを消化していました。金曜日の田辺(豊治/F1テクニカルディレクター)の囲み会見で、マックスの周回数が少ないのではないかという質問がありましたが、セッションの終盤に赤旗が出て、最後に走行することができなかった以外は、すべてプログラムどおりでした。マックスの金曜日のコメントにもあるように、自分たちがやりたかったことはすべてできて満足しているという状況でした。それはドライバーだけでなく、チーム内も落ち着いていました。
今回の優勝は、Q2で唯一ハードタイヤを選択してQ3へ進出した土曜日のストラテジーに尽きると思います。ピレリも言っているように、ハードでQ3へ進出したドライバーは過去にいません。やはり、レースは攻めていかないといけないということをあらためて痛感しました。
そして、そのストラテジーを立てるレッドブルのチーム力と、ストラテジーをやり切るマックスのドライバーとしての能力の高さがこの優勝の大きな原動力になったと思います。
したがって、スタート直後の4コーナーまで無事に通過し、1周目のコントロールラインを3番手で通過したら、マックスの腕をもってすれば、ストラテジー的におもしろいレースになると思っていて、その通りの結果となりました。
チームメートの(アレクサンダー)アルボンも徐々にマシンにも慣れ、5位でフィニッシュしました。本人はまだ納得していないところもあるようですが、後半戦に向けて、期待が持てるレースだったと思っています。
もちろん、まだメルセデスのマシンとパワーユニットには敵わないところはありますが、レッドブルの戦略の高さ、チーム力といった総合力をもってすれば、まだまだ(優勝争いに)割って入ることができることを感じたレースでした。
またホンダがパワーユニットを供給するもう1チームのアルファタウリも今シーズンは徐々に調子を上げてきて、クビアトは16番手からスタートしながら、10位入賞を果たしました。一方、チームメートのガスリーはタイヤのデグラデーション(性能劣化)が大きく、入賞まであと一歩という11位に終わりました。
今週から日本はお盆休みです。ホンダにとっても、日本のファンの皆さんにとっても、お盆休みにいい報告ができたことを心からうれしく思っています。
──優勝の手応えは、いつごろから感じていましたか。
山本MD:先週のイギリスGPのレース終盤にメルセデス勢が相次いでタイヤをパンクさせましたよね。それを踏まえて、今週はうまく噛み合えば、チャンスはあると思っていました。
それを確信したのは、予選の前に行われたブリーフィングで、「Q2はハードでいく」と聞いたときでした。それを聞いて、小さくガッツポーズしました。おそらく、チームのみんなもそう思っていたと思います。
──そのブリーフィングでは、アルボン選手のほうもハードでいく予定だったのですか。
山本MD:最終的にはチームに確認してもらいたいのですが、そうではなかったと思います。やっぱりドライバーによってマシンのセッティングは異なり、またFP1(フリー走行1回目)からFP3(フリー走行3回目)の状況を見て、チームとしては予選とレースのシナリオを作っていると思うので、同じ状況ではなかったと個人的には認識しています。