今年の第6戦スペインGPでは、ドライバーとチームとの無線のやりとりで、緊張状態となった瞬間が何度かあった。そのうちのひとりが、マックス・フェルスタッペンと、レッドブル・ホンダのフェルスタッペン担当レースエンジニアであるジャンピエロ・ランビアーゼの無線交信だ。その当時の前後の状況とともに、無線を振り返る。
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スタートでバルテリ・ボッタス(メルセデス)をかわして2番手に上がったフェルスタッペンの出だしは、悪くなかった。先頭を走るルイス・ハミルトン(メルセデス)との差が2秒以上に広がらないまま6周がすぎると、ランビアーゼがフェルスタッペンにこう告げる。
レッドブル・ホンダ:ハミルトンとのギャップが縮まり出している
しかし、フェルスタッペンは、それがハミルトンの全力ではないことを感じ取っていた。
フェルスタッペン:わかっているよ。だって、ハミルトンはいま超スロー走行しているからね
フェルスタッペンの勘は当たった。13周目からハミルトンのペースは1分23秒前半に入り、1分23秒半ばのフェルスタッペンとの差が広がっていった。そして、16周目にランビアーゼから前後のペースを知らせる無線が入る。
レッドブル・ホンダ:いまハミルトンは23.3で、ボッタスは23.7だ
ところが、2周後の18周目にフェルスタッペンは1分24秒台に落ち、たまらず報告する。
フェルスタッペン:リヤが厳しくなってきた
それでもピットが動かないと、早くピットインしてタイヤを変えたいと訴える
フェルスタッペン:ターン7が最悪だ。もうタイヤが終わっちゃったよ
レッドブル・ホンダ:ターン7はいま追い風がひどいだけだ
フェルスタッペン:追い風は関係ないよ。いやタイヤが完全に終わっているんだ
しかし、このときフェルスタッペンの20秒後方にレーシングポイントのランス・ストロールがいたため、その後ろに回りたくないレッドブル・ホンダ陣営は、タイヤが終わっているものの、まだストロールよりもペースが速いフェルスタッペンをステイアウトさせて、十分なギャップを築いてからピットインさせるつもりだった。
ところが、フェルスタッペンはその戦略に納得がいかず、再び無線でこう訴える。
フェルスタッペン:もう一度繰り返してもらいたいの? タイヤは完全に終わっているんだよ
レッドブル・ホンダ:繰り返してもらわなくてもだいじょうぶだよ、マックス
フェルスタッペン:いま、僕たちはものすごくタイムを無駄にしている。渋滞のなかに入っても問題ないよ。彼ら(レーシングポイント)なんて、すぐ抜けるから
21周目、ストロールとの差が22秒以上となったのを確認して、レッドブル・ホンダはフェルスタッペンをピットインさせ、ミディアムタイヤに履き替えさせた。