2020年シーズンで5年目を迎えたハースF1チームと小松礼雄エンジニリングディレクター。第6戦スペインGPでは金曜日から速さを発揮したハースだが、土曜日以降はその速さも影を潜め、入賞を目指して1ストップ作戦を敢行するも届かなかった。8月というイレギュラーな時期の開催となったスペインGPの現場の事情を、小松エンジニアがお届けします。
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2020年F1第6戦スペインGP
#8 ロマン・グロージャン 予選17番手/決勝19位
#20 ケビン・マグヌッセン 予選16番手/決勝15位
2度目の3連戦の最後は、例年5月に行われているバルセロナ-カタロニア・サーキットでのスペインGPでした。スペインでは再び新型コロナウイルスの感染が広がっており、スペインからイギリスに入国する人には2週間の自己隔離が義務付けられていますが、僕たちF1関係者はその義務を免除されたので予定どおり移動することができました。
さてスペインGPでは、金曜日のフリー走行1回目からロマンが6番手、ケビンが9番手、フリー走行2回目ではロマンが5番手と非常に速かったです。正直これほどの速さは期待していなかったので、僕も驚きました。これだけ速かった理由についてはほぼ明らかになりましたが、まだ100%というところまではきていません。
金曜日は特にセクター3で速かったのですが、バルセロナのセクター3はストレートがなくてコーナーが3つにシケインがひとつというレイアウトなので、パワーユニット(PU)性能よりも車体の良し悪しがはっきりと出ます。普通に考えると僕らがグリップ不足で最も苦労するセクターのはずなのですが、この日のロマンはシャルル・ルクレール(フェラーリ)をコンマ1秒ほど上回るタイムを出してみせました。
基本的にバルセロナには、モナコやハンガリーほどではないにしても、かなりダウンフォースをつけたクルマを持ち込みます。しかし今回の結果から言えることは、セクター3で速かった要因は必ずしもダウンフォースではないということです。ウチのクルマにフェラーリやレーシングポイントほどのダウンフォースがあるわけではないので、VF-20の良い特性を引き出せた結果だと思っています。
ちなみにハンガロリンクのセクター3もほとんどストレートがなくてコーナーが3つと、似たようなレイアウトなのですが、ウチはハンガロリンクのセクター3では速くなかったので、ここにもヒントがあると思っています。
実は金曜日の夜の時点であるレベルでの仮定を立てていたのですが、それが正しければ土曜日も速さを発揮できたはずでした。でも実際にはクルマが上手く機能せず、土曜日はタイムが伸びませんでした。
この金曜日に速かった理由がはっきりとわかれば、反対に土曜日に遅かった理由もわかりますし、これから先に繋がります。金曜日の速さは想定外でしたが、このアップデートを入れていないクルマの仕様でもこれだけ速く走れるという自信にはなりました。