F1第8戦イタリアGPでピエール・ガスリーが挙げた勝利は同じレースに出ているライバルたちや歴代のF1ドライバー、そしてフランス大統領に渡るまで多くの人が祝福したものになった。
今週末、スーパーGT第4戦が行われるツインリンクもてぎでガスリーにゆかりのある人物たちに話を聞くと、かつて一緒に戦った仲間やライバルにとっても、今回の優勝は意味のあるものだったことが分かる。
2016年にGP2でチャンピオンを獲得したガスリーは翌年、全日本スーパーフォーミュラ選手権にチーム無限から参戦し、惜しくもチャンピオンシップは2位に終わったが、最終戦までタイトルを争った。
当時、ガスリーのチームメイトであり、その強さと人間性を一番身近で感じ、衝撃と刺激を味わった山本尚貴はガスリーの勝利を「誇らしい」と言う。
「F1は毎戦見ていますが、ああいう誰が見ても緊迫した状況のレースは本当に久しぶりに見た気がしました。まさしくレースだなと。DRS圏内に入られないように走るガスリー選手に、なんとか近づこうと追う(カルロス)サインツJr.選手、お互いが全力を出し切っているのが分かるレースはあるようでないんですよ。DRS圏内に入られないように要所、要所できちんと抑えていましたが、エネルギーマネジメントを考えながらやらないといけないので、ドライバーはもちろんチームの力もあると思います」
山本尚貴は昨年のF1日本GPでトロロッソ(現アルファタウリ)・ホンダのマシンをFP1でドライブ。今回のイタリアGPからエンジンマッピングの変更ができなくなったとはいえ、1年前のマシンの感触、走行中のさまざまな作業を体感している唯一の日本人ドライバーでもある。
「僕は昨年のF1日本GPのときに彼のマシンでF1を走らせてもらいました。ルールは多少変わったかもしれませんが、いまのF1は走りながらステアリングも操作して、ミラーを見ながら後ろとの間隔も見るなどいろいろなところにセンサーを行き届かせないといけない。乗せてもらったからこそ分かることですが、あの緊張感の高いトップ争いの状況でミスなくああいう走りができて、優勝できたことは本当にすごいと思います」
「サインツJr.選手も最後は追いつけませんでしたが、F1もいまのスーパーフォーミュラと同じでダウンフォースに頼っている部分が大きいと思います。そうなるとやはりある一定のところまでは前のマシンに追いつけても、そこから先はなかなか詰まらない。しかも前にガスリー選手のマシンがあって綺麗な空気が当たらないなか、コーナーなどは特に大変だったと思います。そのなかでもジワジワと詰めて行ったという意味では彼の頑張りもすごかったですよね」
「僕は日本人としてはどのドライバーよりも一緒にレースを戦ったチームメイトなので、ガスリー選手のすごさは2017年に肌で感じました。彼の人柄もよく知っているので、勝ってくれたことは僕も誇らしい気持ちになります。いま戦っているフィールドは違いますが、僕も負けていられないなと思うと同時に、彼のように同業者から見てもすごいと思わせるレースを自分もしたいと思うほど、刺激をもらいましたね」