「今日はソフトタイヤがなぜかうまく機能しなかったけど、ピットインしてミディアムタイヤに履き替えてからはペースが改善した。でも、そのときにはメルセデスはかなり先を走っていたからどうしようもなかった。だから今日は3位で満足だ」
レース後に開かれたFIAのトップ3記者会見に出席したマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)は、スタートで履いたソフトタイヤに苦しんでいたことを明かした。
F1では予選Q3に進出したトップ10のドライバーは、Q2で自己ベストを刻んだときに履いたタイヤでスタートしなければならない。そのQ2で履いたタイヤが、レッドブル・ホンダとメルセデスで分かれた。レッドブル・ホンダはソフトを選択したのに対して、メルセデスはミディアムタイヤを履いてQ3へ進出していた。
果たして、レッドブル・ホンダが選択したタイヤや戦略は機能せず、フェルスタッペンが3位に終わっただけでなく、チームメートのアレクサンダー・アルボンはポイント圏外という結果に終わった。
レース後の会見で、冒頭のように語ってフェルスタッペンがコメントし終えると、横にいたルイス・ハミルトン(メルセデス)が、フェルスタッペンにこう質問した。
「なぜ(Q2で)ミディアムにしなかったの?」
フェルスタッペンはこう答えた。
「1セットしか残っていなかったんだ。だから、それを予選で使うというリスクを冒したくなかった。それにそもそもソフトがこんなにレースで機能しないとは想像もしていなかったしね」
今回のレッドブル・ホンダのタイヤ戦略に疑問を持っていたのは、ハミルトンだけではないはずだ。それはQ2でソフトを選択したことだけが理由ではない。そこに至るまでの過程が、どうにも腑に落ちないからだ。
金曜日を終えた段階で、土日に使用するために残されたタイヤのセット数は、レッドブル・ホンダもメルセデスも同じだった。ハード1セット、ミディアム2セット、そしてソフトは6セット。すべて新品だ。つまり、金曜日まではレッドブル・ホンダはメルセデスとほぼ同様にタイヤを使用し、返却していた。
レッドブル・ホンダがメルセデスと異なる戦略を採り出したのは、土曜日のフリー走行3回目からだった。メルセデス勢ふたりがソフトを2セット使用したのに対して、レッドブル・ホンダはフェルスタッペンがミディアムとソフトを1セットずつ、アレクサンダー・アルボンはハード、ミディアム、ソフトを1セットずつ使用した。
フリー走行3回目が終了すると2セット返却しなければならない。メルセデス勢ふたりは使用済みのソフトを2セットを返却。フェルスタッペンも使用済みのミディアムとソフトを1セットずつを返却。アルボンはハードはレース用に最低でも1セットは残しておかなければならないため、使用済みのミディアムとソフトを1セットずつを返却した。
予選前の時点で、手持ちのタイヤのセット数を整理すると、以下のようになる。
ハミルトン:ハード1、ミディアム2、ソフト4
ボッタス:ハード1、ミディアム2、ソフト4
フェルスタッペン:ハード1、ミディアム1、ソフト5
アルボン:ハード1(中古)、ミディアム1、ソフト5
したがって、フェルスタッペンもQ2でミディアムを使おうと思えば使えたが、もしミディアムでアタックしてQ2を突破するに十分なタイムを叩き出せなかった場合、レースでは中古のミディアムしか残らなくなるため、そのリスクを冒したくなかったというわけだ。