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F1 ニュース

投稿日: 2020.11.26 20:00
更新日: 2020.11.27 14:35

【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第16回】難しいタイヤ交換のタイミングと、50周を走り切るために必要だったリスク

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F1 | 【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第16回】難しいタイヤ交換のタイミングと、50周を走り切るために必要だったリスク

 2020年シーズンで5年目を迎えたハースF1チームと小松礼雄エンジニアリングディレクター。コロナ禍で急きょカレンダーに加わった第14戦トルコGPは、開催前に路面を再舗装したこともあって、初日からまったくグリップのない路面で走ることになった。雨も降り非常に難しい状況で、ハースはこの週末をどう戦ったのか。そして様々に別れたタイヤ戦略を、小松エンジニアはどう分析しているのか。現場の事情をお届けします。

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2020年F1第14戦トルコGP
#8 ロマン・グロージャン 予選19番手/決勝リタイア
#20 ケビン・マグヌッセン 予選16番手/決勝17位

 9年ぶりに開催されたトルコGPは、グランプリ開催の直前にイスタンブール・パークの路面が再舗装されたこともあって初日から大変でした。ポルティマオ(第12戦ポルトガルGP)でも直前の再舗装でグリップ不足に苦しみましたが、イスタンブールは再舗装からF1開催までまったく使用されていなかったので、さらに路面は安定していませんでした。急きょ開催が決まったのでこうなってしまったんでしょうね。

 また、以前レースをしていた際には週末を通してコースがどんどんバンピーになってくるという問題がありました。これは土地自体のせいなのでしょうが、木曜日にサーキットを歩いた時にも雨は降っていなかったのにも関わらず、ランオフエリアの芝生から水がコース上に流れ出てしまっており、地面はずいぶん飽和状態なのだなと思いました。

ロマン・グロージャン&小松礼雄エンジニアリングディレクター(ハース)
2020年F1第14戦トルコGP ロマン・グロージャン&小松礼雄エンジニアリングディレクター(ハース)

 金曜日のFP1も雨自体は降っていませんでしたが、サーキットを洗ったあとの水がところどころで乾いておらず、濡れているところは本当にツルツルでした。走り始めるとやはりまったくグリップが無く、気温も低いので濡れているピットストレートやピットエントリー、ターン5と6の外側などもなかなか乾かず大変でした。ここまでのグリップ不足に苦しんだのはオースティンの初年度(2012年)以来でしょうか。

 イスタンブール・パークはバックストレートが抜きどころになるので、通常はダウンフォースを少し削ってでも最高速を伸ばせるようにセッティングします。でもFP1で走り出してみるとあまりのグリップの低さで、そのようなセッティングでは全然ダメだということがわかり、セッション終了後にはリヤウイングを取り替えて、空気抵抗も増えるけれどよりダウンフォースをつけてグリップを稼ぐセッティングに変更しました。

 しかし、それでもまだダメだったので、最終的には金曜の夜にモナコGPと同じレベルのダウンフォースをつけました。とにかくグリップ重視の方向にセットアップをふってなんとかタイヤを機能させようとしたのです。

 ここは通常のドライコンディションで走るとかなりタイヤに負荷がかかり、とにかく右フロントと右リヤに厳しいサーキットです。ターン8が有名ですが、シーズンを通じてこれだけタイヤに厳しいコーナーはありません。ですからピレリとしては、タイヤがタレすぎてしまうことを避けるために硬い組み合わせ(C1〜C3)を選択したのでしょう。

 でも開催時期のことを考えれば、少なくともハードタイヤを3セット持ってくる必要はなかったのではないかと思います。というのもこのレースではハードが1セットしか必要ないと予想されたので(たとえ通常の路面状況であったとしても)、他の2セットのハードタイヤを金曜に使うことになるからです。しかし、この路面状況ではハードタイヤはまったく機能せず、ミディアムタイヤより数秒遅く使い物になりませんでした。

ロマン・グロージャン(ハース)
2020年F1第14戦トルコGP ロマン・グロージャン(ハース)

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