例年より4カ月遅れて始まった今季のF1も、ようやく最終戦を迎えた。コロナ禍のなか、感染対策に細心の注意を払いながら、転戦し続けた。ホンダスタッフのなかには、開幕戦からここまで、一度も自宅に帰れなかった者もいる。「それでも戦い続けたモチベーションの源は?」という問いに、田辺豊治テクニカルディレクターは、「ホンダは何のためにF1に挑戦しているのか。その思いしかなかった」と、語っていた。
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──2020年シーズンも、いよいよ最終戦を迎えました。
田辺豊治テクニカルディレクター(以下、田辺TD):今季は期間的に短く圧縮され、レース数も少なかった。連戦が立て続けに重なり、あっという間ではありましたが、同時にコロナの感染対応にも気を使い続け、長い1年でもありました。
最終戦は来季に向けてのスタートが切れるような、いい形で来季につなげられる終わり方にしたいと思っています。元気が出るような週末で、締めくくりたいですね。
──このままいけば、ホンダがペナルティを受けずにPU年間規定数内でシーズンを終えるのは、今季が初めてとなります。その要因を、どう分析していますか。
田辺TD:そんな現状を手放しで喜べないのは、まず今季が予定された22戦から17戦に減ったことですね。それでも年間3基は、変わらなかった。レースの絶対数が少なかったわけです。ただ我々としては、22戦でもいけると思っていますが、証明はできません。
なぜかに関しては、これまで何度もお話ししてるように、ベンチテストや実走で経験した様々なトラブルから学び、熟成を図ってきた。その結果が今の信頼性に結びついたわけで、過去から学んで現在があるということです。そこが一番だと思っています。
──ハードとしての耐久、信頼性が上がったのと同時に、現場での使い方もうまくいった面があったのでは?
田辺TD:今季が従来と大きく違った点は、シーズン中のアップデートができなかったことでした。年間3基を、1スペックで戦ったわけです。信頼性由来の改良は別ですが、FIAと他チームの合意が必要です。信頼性を考えれば、1基の使用期間を極力延ばして、次につなげるという考え方もありました。
ただ我々は信頼性の向上に手応えを感じていたこともあって、3基を早めのタイミングで入れて、あとはその3基を使い回していく方法を取りました。そして予想通り、うまく行きましたね。
──今季は当初予想されてないサーキットもいくつか入り、デプロイメントを使い切るサーキットが増えた印象です。そこはやりにくかったですか。
田辺TD:なんとかやってきました。ただそこは我々のウィークポイントだということも、理解しています。ですのでシーズン中に対処しつつ、なんとか頑張れたという感じですね。