スクーデリア・アルファタウリ・ホンダとチーム名も変わって再出発した1年目。ほぼ毎戦コンスタントに入賞し、2019年より4戦少ない開催数だったにもかかわらず、チーム史上最高の二桁ポイントを獲得した。さらに第8戦イタリアGPではピエール・ガスリーが初優勝を果たすなど、確かな足跡も残した。
一方でコンストラクターズ選手権は7位と、2019年より順位を下げた。目標としていた5位を達成できなかっただけでなく、ライバルのマクラーレン、レーシングポイント、ルノーに大きく差をつけられてしまった。2020年はどの部分で進化を実感し、一方で何が足りなかったのか。アルファタウリ・ホンダの本橋正充チーフエンジニアが振り返った。
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──1年間お疲れ様でした。しばらく会っていない間に、髪の毛がずいぶん伸びましたね。
本橋正充チーフエンジニア(以下、本橋CE):伸びましたよ。6月の頭に日本から飛んできてから、一切切っていないんです。
──それだけ忙しかった?
本橋CE:それもありますけど、やっぱり(コロナが)心配じゃないですか。田辺(豊治/ホンダF1テクニカルディレクター)さんが「切ってやる」っていうんですけど、それも怖くて(笑)。
──確かに(笑)。最終戦アブダビGPはピエール・ガスリー8位、ダニール・クビアトは入賞にわずかに届かず11位でした。今季のアルファタウリを象徴するような、そんな1戦だった気がします。
本橋CE:う〜ん、結果だけ見るとそうかもしれませんが、レースの流れも含めてちょっと運に左右された部分もありました。運とかタイミングで、(ふたりの)差がついているのかなと思いますね。週末を通したパフォーマンスでは、ふたりはほぼ同じぐらいなんですよ。ちょっとした出来事で、クビアトの順位が下がることが多かったですね。
──運やタイミングで順位が大きく変わるというのは、中団グループのなかのアルファタウリにも言えることですよね。今年もライバルたちとのパフォーマンス差は、非常に接近していました。
本橋CE:そうですね。上の数台は抜きん出ていますけど、中団の戦いは完全にパックになってた。予選もレースも、ちょっとしたことで大きく順位を落とす。そんな1年でした。
──シーズンを振り返ると序盤4戦ぐらいは、なかなか結果が出せなかった。「ポテンシャルはあるのに、マシンへの理解が進んでいない」と、本橋さんは当時語っていました。その後少しずつ結果が出るようになって、けれどもマクラーレン、レーシングポイント、ルノーとの差はどんどん開いていった。モンツァの優勝を別にすると、8位前後の入賞が多かったです。ダブル入賞も少ない。中団のなかでの上位3チームとの差は、最終戦まで縮まらずにきたということですか。
本橋CE:クルマのパフォーマンス自体は、チームの開発力もあって、かなり上がってきたという認識です。金曜と土曜の、クリーンエアで走ってる時のパフォーマンスは、割りといいところにきています。それがレースでは、どうしてもDRSトレインにハマってしまって、そこでのタイヤの保たせ方、セーフティカーのタイミングなどで順位が入れ替わったりする。レースをうまく戦えないことで、本来のパフォーマンスにそぐわない結果になっているのかなと。クルマ単体で見た時には、パフォーマンスは2019年よりさらに改善しています。事前準備でも狙ったバランスでセットアップができたりと、車体開発とレース現場での運営が揃って上昇気流に乗ってきていると思っています。