有視界走行を許されるのはごく一部の者だけだった。後ろになればなるほど、水煙がたちこめるなかを突進していかねばならない。めったにないフル・ウエットレース、今年サンパウロの空は泣き続けた。
4年ごとに雨がらみになるブラジルGP、12年(勝者バトン)、08年(マッサ)、04年(モントーヤ)と繰り返されてきた。単なる偶然かもしれないが『16年決戦レース』がまたそうなるような気がしてならなかった。
「やっぱりここがリスキーだ」。ルコネサンス周回が始まってすぐ、12~13コーナーでロマン・グロージャンがクラッシュ。ドライなら全開でも濡れると、この坂は上から雨水が流れてくる“鬼門”に豹変する。堂々予選7位を得た彼がやるとは、それにしてもフェラーリPUのドライバビリティは中回転域がややピーキーに感じられた。レースでキミ・ライコネンがクラッシュ、セバスチャン・ベッテルもスピン、彼らもそれに苦しんだのではないか。
10分遅れSCスタートは当然だろう。2分オーバータイムで周回中に、4番手マックス・フェルスタッペンが3コーナーのアウト・ラインをしきりに試し、セクター2でレコードラインをわざと外す動きを繰り返すのに気付いた。またレッドブル2台は後方に一段高く水煙を吐き出すのが印象的で、ダイナミック・ダウンフォースに優っているのが一目瞭然(前方メルセデス2台よりも)。
7周目、SCペースが1分58秒台に上がり、水中戦開始。あっさり1コーナーでフェルスタッペンがライコネンをとらえる。これがこの日の“オーバーテイク・ショー”の始まりだ。
衆目の二人対決、10周目に2番手ニコ・ロズベルグは1.791秒まで接近した後、2.918秒、3.025秒と離れていった。このコンディションで深追いを慎み、長くなるはずの71周をじっくり行こうという考えだ。12周目にマーカス・エリクソンが13コーナーから大きくスピン、クラッシュ。再びSCラン、2分オーバータイムからは路面状態がまた悪化方向にあると見てとれた。