1月15日に発売された『モーターファン・イラストレーテッドvol.172 よくわかるターボ』では、『2020年F1シーズンレビュー』と題して、2020年のF1マシンテクニカルレビュー記事を掲載中だ。
本誌では写真と文章を用いて、およそ8ページに渡って2020年のF1マシンを詳細に分析しているが、このページではその一部を公開する。
**********
15年前のF1と現在のF1を並べてみると、現代のF1マシンの大きさが実感できる。トヨタ・センチュリー(全長5335mm)より長い。大きくなってしまった一因は2017年のレギュレーション変更にある。2割以上重たくなっているが、15年前より格段に速い。
2020年F1シーズン最終戦のアブダビGPでは、フェルナンド・アロンソが2005年にタイトルを獲得したマシン、ルノーR25に乗ってデモンストレーション走行を行った。ルノーが43年間のF1参戦活動に終止符を打つのに合わせた催しである。といっても、2021年はアルピーヌにチーム名が変わるだけで、参戦体制は変わらない。
現役F1ドライバーではないのにアロンソがステアリングを握ったのは、2021年にアルピーヌで現役復帰を果たすからだ。2001年にF1デビューを果たした1981年生まれのアロンソは(40歳になる)、3年ぶりのF1復帰となる。それでも現役最年長ではなく、1979年生まれのキミ・ライコネン(アルファロメオ)がいる。
2021年の最年少ドライバーは角田裕毅だ。2000年生まれの角田はFIA-F3とFIA-F2をそれぞれ1年で済ませ、ホンダのパワーユニット(PU)を搭載するアルファタウリ・ホンダからF1にデビューする。そのホンダは2020年10月2日、『2050年カーボンニュートラルの実現』に向けた取り組みを加速させるという理由で、2021年シーズン限りでの参戦終了を発表した。ホンダのPUを搭載したレッドブルは2020年に2勝、アルファタウリは1勝を挙げた。
2005年のF1マシンと2020年のF1マシンを並べてみると、最新のF1がずいぶん大きいのがわかる。ルノーR.S.20の全長は5425mmだ。2005年のルノーR25の全長は4800mm。ホイールベースは3100mmで、どちらも当時の標準的な数値である。R.S.20のホイールベースは未公表だが、3700mm前後が近年の相場だ。
F1マシンが大型化したきっかけは、2017年の規則変更にある。この年、車両の最大幅が1800mmから2000mmに広がると同時にタイヤの幅も広くなり、フロントは245mmから305mmに、リヤは325mmから405mmになった。2019年にはフロントウイングの最大幅が広くなり(1800mm→2000mm)、リヤウイングも幅が広くなって(950mm→1050mm)、それまでより高い位置に配されることになった。
ホイールベースを伸ばしたのは、幅が広くなったのに合わせて最適化したためだ。コーナー進入時と高速コーナリング時のスタビリティを高めるのが主な狙い。空力的にも重要で、ダウンフォース量はフロアの面積に比例する。乱流を発生させるフロントタイヤからサイドポッドのリーディングエッジを離すことができるのも、ホイールベースを長くしたくなる理由だ。
当然、2020年のF1マシンは15年前のF1マシンより重くなっている。2005年の最低重量は600kgで、2020年は746kgだ(いずれもドライバー込み)。2005年当時、エンジンの最低重量は規定されておらず、軽量化競争が盛んだった。ルノーの3リッターV10自然吸気が何キロだったか定かではないが、同じ年のホンダのエンジン(RA005E)は88.6kgだった。
2017年以降は1.6リッターV6ターボエンジンに加えてエネルギー回生/力行を行うモーター/ジェネレーターユニットを2基搭載し、バッテリーを積んでいる。これらを合わせたパワーユニットの最低重量は145kgに規定されている。
2005年当時はエンジンに最高回転の規定はなく、ホンダRA005Eは19200rpmを回して662kW以上を発生させていた。2017年以降は最高回転が15000rpmに規定されているが、燃料流量規制によって燃料流量が10500rpmで上限に達するため実質的な上限は13000rpm前後だ。エンジンの最高出力は600kW前後だろうか。2005年時点より低いが、当時の熱効率が20%台だったのに対し、現在は40%をゆうに超えている。
アブダビGPでデモ走行を行ったR25はピレリタイヤを履いているが、当時はミシュランとブリヂストンがタイヤ開発競争を繰り広げており、R25はミシュランを履いていた。
2005年ベルギーGPの予選最速タイムは1分46秒391(平均時速236.050km/h)。ただし、当時の予選は決勝1スティント分の燃料積んで走行していた。当時のコースレコードは2002年に記録された1分43秒726である。2020年ベルギーGPの予選最速タイムは1分41秒252(平均時速249.026km/h)だった。
