レースを愛してやまないファンの方々へ
autosport web Premiumが登場。

詳細を見る

F1 ニュース

投稿日: 2021.01.25 15:53
更新日: 2021.01.25 16:18

2021年のF1に期待したいこと。アロンソ×ルノーの第3スティントとペレス×レッドブルが生む戦術【特別コラム】

レースを愛してやまないファンの方々へ
autosport web Premiumが登場。

詳細を見る


F1 | 2021年のF1に期待したいこと。アロンソ×ルノーの第3スティントとペレス×レッドブルが生む戦術【特別コラム】

 With コロナと表現することに心が痛むけれど、受け入れなければならない現実だ。2021年のF1は、その“シーズン2”を迎えようとしている。カレンダー上は23戦が予定されていても、23戦という数字自体が不可抗力による変更を予感させるもので、F1がどれだけコロナ対策に尽力しようと、世界の感染状況、各国政府の判断によって、物理的に開催が不可能になる事態は十分に考えられる。

 2020〜2021年のマシン開発が大幅に制限されるなか、驚くような戦力図の変化も望めない。そんな状況でも、期待を膨らませるのはドライバーという“選手”の要素。ルイス・ハミルトンのメルセデス残留が確定しても、10チーム中7チームが新たなドライバーを迎えて挑むコロナ禍のシーズン2なのだ。

 なかでも注目されるのは、最後にトップチームのシートを獲得したセルジオ・ペレス。レッドブルが育成プログラムの外からドライバーを迎えるのはマーク・ウェバー以来(実質上、初めて)のことで、ペレスにとっては11年目のF1でようやく手にしたトップチームでのチャレンジとなる。

 ペレスが類まれなタイヤ管理能力によって成績を残し、2013年に華々しく移籍したマクラーレンは、その前年にはルイス・ハミルトン、ジェンソン・バトンとともに7勝を挙げていたチームだった。

 しかし2013年、不振に陥ったチームではバトンさえ表彰台に届かず、困難な状況のなかではペレスの経験不足も災いし、粗削りな一面が批判を浴び、1年でチームを去ることになった。失意の底から彼を救い出したのがフォース・インディアで、以後7年間、ペレスはシルバーストンのチームとともに成長を遂げることになった。

 興味深いのは、セルジオ・ペレスというドライバーがデビュー当時とは比較できないほどの進化を示してきた点だ。起点となったのはマクラーレンで味わった失望で、辛い経験ではあったものの「あの経験がなければ今日の僕はいない」と彼は表現する。

「人生のあらゆる局面で言えることだけど、何かが上手くいかない時には、立ち止まって、なぜ上手くいかないのか熟考することが必要だった。誰かにアドバイスされたわけじゃない。僕自身がそう思えることが大切だった」

 具体的には、自らの攻撃性を最大の強みとして接戦に挑んできたドライバーが、視野を広げ、レース距離で“最大限の結果”を引き出す術を身に着けた。

 混戦のなかで“限界”は自分だけで決めるものではなく、相手との相対的な関係によって決まるものだと悟り、抜けない状況では刃を隠し、レース後半に有利な作戦を展開すべくベースを築いた。生来のタイヤ管理能力はもちろん、そんな彼に説得力のあるレース結果をもたらした。

2020年F1第16戦サクヒールGP セルジオ・ペレス(レーシングポイント)
2020年F1第16戦サクヒールGP セルジオ・ペレス(レーシングポイント)

 フォースインディアは「終わりかけていた僕のキャリアを生き返らせてくれたチーム」だとペレスは言う。チームの進化にともなって、ペレスは自らの攻撃性を開放するチャンスをも的確につかんでいった。2020年、トルコGPでの2位、サクヒールGPでの初勝利は、7年間の共同作業の、集大成だったと言っていい。

 レッドブルという新しい環境のなか、セルジオ・ペレスはどんな活躍を見せるだろう――2021年の大きな興味だ。予選ではマックス・フェルスタッペンが先行するだろう。しかしレースにおいては、扱いにくいピレリタイヤを使いこなしてきた“レーシングポイントの企業秘密”がそのまま手に入る状況。

 フェルスタッペンとペレスがお互いの走行データから学び、相乗効果の結果チームが新たな戦術を編み出せば“ハミルトンのメルセデス”を挟み撃ちにする――レッドブルが大好きな状況が生まれるのだ。

 ペレスを手放すという判断は、ローレンス・ストロールによるものだ。アストンマーティンとして2021年に挑むチームにとって、その判断が損失とならないためには、セバスチャン・ベッテルの復活が必須となる。

 コーナーの途中でバランスが変わらない、ベッテルが好む“リズムをつかめる”マシンと、チームのサポートはもちろん。挑戦の行方は、何よりも、ベッテル自身が立ち止まって熟考できるか否かにかかっている。

2020年シーズンは最悪の年になってしまったと言わざるを得ないベッテル。チームが変わり、かつての輝きを取り戻せるか。ベッテル自身の気持ちと姿勢を変えることも重要になるはずだ。
2020年シーズンは最悪の年になってしまったと言わざるを得ないベッテル。チームが変わり、かつての輝きを取り戻せるか。ベッテル自身の気持ちと姿勢を変えることも重要になるはずだ。

◼︎次のページへ:帰ってくるアロンソがリカルドの抜ける穴を埋めてくれる


関連のニュース