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F1 ニュース

投稿日: 2021.03.16 08:00
更新日: 2021.03.15 19:33

「チャンピオンになれたことは天国の川口さんにも届いている」角田裕毅がF4時代に見せた熱きエピソード

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F1 | 「チャンピオンになれたことは天国の川口さんにも届いている」角田裕毅がF4時代に見せた熱きエピソード

 2021年にスクーデリア・アルファタウリ・ホンダのレギュラードライバーとしてF1デビューを果たす角田裕毅。2019年に渡欧してからは、FIA-F3とFIA-F2というF1直下のシングルシーターシリーズをそれぞれ1年で卒業するというスピード出世を果たしている。

 それ以前、日本ではFIA-F4選手権に2年間、フルエントリーしていた。4輪レースに本格デビューを果たした2017年はSRS/コチラレーシングから参戦し、年間3勝を挙げるなどしてランキング3位に。普通なら、全日本F3選手権(当時)などへステップアップしてもおかしくない成績だったが、角田はなぜ、この足踏みとも見えるFIA-F4での2年目を過ごすことになったのか。

 ホンダ・フォーミュラドリーム・プロジェクト(HFDP)の監督としてF4時代の角田を支えた阿部正和氏は「じつは翌年(2018年)から全日本F3に行かせようという話もあったんです」と話すと、ホンダの育成関係者のあいだでは2017年の時点で角田を高く評価する声が多かったことを明かす。

「ただ、『もう1年、FIA-F4で勉強させて、タイトルを獲らせてからのほうがいいと思う』と、ホンダさんには伝えました。裕毅のほうも『スーパーライセンスのポイントもしっかり獲ってヨーロッパに行くなりしたほうがいいんじゃないの』と、説き伏せました」

HFDPの監督としてF4時代の角田を支えた阿部正和氏(右)
HFDPの監督としてF4時代の角田を支えた阿部正和氏(右)

 阿部氏が“勉強”させたかったことにはもちろんドライビングも含まれている。しかし、それ以上に成長を促したかったのは人間性の部分。同氏によると、角田は自らの目標を達成するために日々鍛錬を積んでいるが、「トレーニングで非常にうまく手を抜く」こともあったほか、若さゆえか「人としてちょっとバグがあった(笑)」と評される一面ものぞかせていたようで「そういうところを直したい」と考えていたそうだ。

 結局、角田は2018年にさらなる成長を見せFIA-F4のタイトルを獲得。翌2019年からは戦いの舞台をヨーロッパへと移すことになった。しかし、阿部氏はその門出に不安をいだいていたと話す。

「裕毅は、メンタルの部分ではまだ学ばないといけないと感じていました。彼は欲を出すと失敗するんですよ。だから自分を抑えることを知ったほうがいいと。オートポリスの予選がいい例です。止めたにもかかわらずあいつ、いきましたからね」

 オートポリスで行われた2018年のFIA-F4第6大会、予選で角田はあるアクシデントに見舞われた。この大会を迎えた段階で角田はランキングトップ。チャンピオンも射程圏内に入れて迎えた大事な予選セッションで、角田は3番手タイムをマークしていた。

 阿部氏によると、このときの一発の速さではライバルチームに先を行かれていたものの、角田のレースでの強さを考えれば、決勝には期待が持てていたようだ。それでも、角田はポールポジションの獲得にこだわり、残り5分で再びコースイン。しかし、スピンしたことでタイヤにダメージを負い、タイヤの交換を余儀なくされたほか、それにともなう最後尾へのグリッド降格ペナルティを受けた。

 勇み足とも言えるこの角田の行動。しかし、角田を突き動かした事情がその背景にはある。

「お世話になっていたエンジニアの川口(里巳)さんが入院して、現場に来られなかったんですよ。その後、11月に亡くなってしまうんですが、みんな病状は知っていて長くはないなと覚悟していたんです。だから私、裕毅に『これまで世話してくれてクルマを作ってくれた川口さんの命があるうちにチャンピオンを獲ってほしい』って言ったんです」

 オートポリスでの“失点”により、タイトルの確定は最終大会もてぎへと持ち越されたが、先出のとおり、角田はこの年のドライバーズタイトルを獲得した。

 阿部氏によると角田は戴冠後、「川口さんが生きているうちにチャンピオンを獲得できなかったことがすごく心残りだけど、チャンピオンになれたことは天国の川口さんにも届いていると思う」と話したという。ひょうひょうとした印象の角田だが、義理堅く、熱いパーソナリティの持ち主であることがこのエピソードから伺える。

 auto sport本誌3月12日発売号(No.1548)では阿部氏のほか、今年もスーパーGT GT300クラスで活躍する道上龍が、角田の日本時代の仰天エピソードや“知られざる一面”を明らかにしている。

2018年FIA-F4最終戦もてぎでシリーズチャンピオンを決めた角田裕毅
2018年FIA-F4最終戦もてぎでシリーズチャンピオンを決めた角田裕毅
当時18歳の角田裕毅。撮影されるのも慣れていなかったのか、すこし緊張気味
当時18歳の角田裕毅。撮影されるのも慣れていなかったのか、すこし緊張気味
角田裕毅を特集した3月12日発売のauto sport No.1548の詳細はこちらまで
角田裕毅を特集した3月12日発売のauto sport No.1548の詳細はこちらまで

【取材動画公開中!】

オンラインで行った道上龍の取材動画をYouTube『オートスポーツSUBチャンネル』(https://www.youtube.com/c/autosportSUBChannel/)で公開中です。ぜひ本誌とあわせてお楽しみ下さい。

●auto sport No.1548の電子版はこちら


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