オンラインでの2021年F1新車発表では巧妙に隠されていたアップデート部分が、バーレーン直前テストで砂漠の炎天下にさらされた。失われたダウンフォースを回復しようと、各チームが様々な工夫を凝らしている中で、最も注目すべき5つの変更点を、F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルが紹介する(全2回)。
3)メルセデスを「参考」にしたが、「模倣」はしていないレッドブル
昨年のレッドブルは、マシンリヤの不安定な挙動に大いに苦しんだ。それもあって昨年抜群の安定性を誇ったメルセデスのリヤの足回りを参考にするであろうことは、大いに考えられることだった。一番の特徴はロワーアームがかなり後方にあることで、メルセデスの場合は車体側取り付け位置がライバルチームのようなギヤボックスを収納するカーボン製ケースではなく、その後方の衝撃吸収構造だった。
レッドブルの技術陣はロワアームを後退させるというアイデア自体は採用しながら、あくまでギヤボックスケースへの取り付けにこだわった。そのためRB16Bのギヤボックスケースは、後方に伸ばされている(W11、W12とRB16Bの比較写真参照)。これはおそらく衝撃吸収構造にサスペンションを取り付けるには貴重なトークンを使用しなければならず、それを避ける目的だったと思われる。
RB16Bのリヤサスペンションを前方から見ると、ロワアーム、プルロッドなどのレイアウトが一新されているのがわかる。メルセデスW12では後方のアームだけが少し離れて上方に置かれ、残りの部分は下方に。その結果下部を流れる気流の量は少なくならざるを得ない。
それに対しRB16Bはすべての構成パーツがコンパクトに揃い、しかもW12に比べ上方に取り付けられている。そのおかげでより多くの気流がサイドポンツーン下部を通っていくことができる。
4)アルピーヌの巨大エンジンカバー
マクラーレンのディフューザーに負けず劣らず話題になったのが、アルピーヌのぼってり太ったエアインテーク後部の形状だった。フランスのオールドF1ファンでなくても、リジェJS5を連想した人は多かったと思う。英国エンストンの技術者たちは、それまでエンジン上部に置かれていたラジエターを下の方に移動させた。外側から見たエンジンカウルの上部がすっきりした代わりに、左右が膨らんだのはそんな理由からだ(赤矢印参照)。
いうまでもなくここが膨らんだままでは、リヤウイングに向かう気流に大きな影響を及ぼしてしまう。そこでアルピーヌは、以下のような解決法を採用した。まずラジエター自体を縦に長くすることで、幅を狭くすることに成功した。その結果、ディフューザーにより多くの気流が流れるようになった。ディフューザーはリヤウイングよりドラッグが少なく、ディフューザーでダウンフォースを稼いだ方が空力効率はいい。
テスト2日目には、さらに細くなったエンジンカウルがお披露目された。ラジエターが再び別の位置に移動したのか、カウルの中までは確認できていない。いずれにしてもこのバージョン2は、去年のルノー・R.S.20のレベルまでカウル部分が細くなっていた。