2020年F1第1戦バーレーンGPの決勝レースをポールポジションからスタートしたマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)は、勝利こそ逃したものの、最終周までルイス・ハミルトン(メルセデス)と激烈なバトルを繰り広げた。さらに角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)は17番手まで後退した序盤から果敢なオーバーテイクを繰り返して9位フィニッシュ。ルーキーらしからぬ落ち着いたレース運びで初レース初入賞を果たしたことに、ホンダF1の田辺豊治テクニカルディレクターも称賛を惜しまなかった。
対照的にセルジオ・ペレス(レッドブル・ホンダ)とピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)は、スタート直前のトラブルや直後の接触事故で、期待された結果を残すことはできなかった。そんな悲喜こもごもの開幕戦について田辺テクニカルディレクターは、「開幕戦としてはいいレースができた」と総括する一方で、「できることはやったという思いはありますが、それが結果に表れなかったという点では悔いはある」と、第2戦以降の雪辱を誓っていた。
────────────────────
──決勝レースの総括からお願いします。
田辺豊治テクニカルディレクター(以下、田辺TD):ポールポジションからスタートして勝利を逃したのは残念ですが、一方で終始トップ争いができました。高いパフォーマンスを発揮できたのは、開幕戦としていいレースだったなと思います。
ペレスは、スタート直前のフォーメーションラップで止まってしまいました。原因はこれから解析しますが、走行中に電源が完全に落ちた。これでおしまいかと思ったのですが、幸い復活して、ピットからスタートすることができました。最後尾から5位まで上がって、非常に力強いレースを見せてくれました。
──角田選手もデビュー戦入賞を果たしました。
田辺TD:中団グループは、今年もかなり厳しい戦いになりそうです。彼もスタートで順位を落としながら、オーバーテイクを繰り返して9位。この3日間で大いに学びがあったはずです。ガスリーもレーススタート直後の接触事故は残念でしたが、予選では素晴らしい速さを披露してくれた。Q2をミディアムタイヤで突破する戦略をとれるほど、今季のアルファタウリ・ホンダは戦闘力が高いと確認できました。
──予選ではコンマ4秒の大差をつけて、ポールポジションを獲得しました。それがレースでは意外に接戦で、最終的な結果を左右した。今後はエンジンモードをより厳しい設定にするなど、考えていますか?
田辺TD:次戦からすぐにプッシュするというように、簡単にはいかないです。23戦を3基で戦うという制約のなか、今後の展開、各グランプリのコース特性などを見ながら考えていきたいと思っています。
──レース週末が始まるまで、ライバルとの本当の力関係はわからないと言っていました。レース終盤のフェルスタッペンの追い上げなどを見ていると、パワーユニット(PU)側の貢献は明らかだと確信が持てたのでは?
田辺TD:昨年までとは違う戦いができているのは、確かだと思います。去年もすべての歯車が噛み合えば、優勝はできていた。しかし昨年のメルセデスとの戦闘力比較で言えば、今年の方が良くなっていると言えます。フリー走行から予選、レースの内容を俯瞰してみて、そう感じています。
──チーム側から具体的に、これだけの効果があったという評価をもらっていますか?
田辺TD:エイドリアン・ニューウェイ(レッドブルのレーシングカーデザイナー)さんからは、「車体側の開発にも大いに貢献してくれて、本当にありがとう」と言ってもらっています。新PUが空力性能の向上に寄与していることは、明らかなようです。