長年にわたりメルセデスF1のチーフストラテジストを務めているジェイムズ・ボウルズは、ミハエル・シューマッハーが3年間のチーム在籍中に手にできるはずだった1勝をつかめなかったことに非常に心が痛んだと語った。
2009年終盤のブラウンGP買収によりワークスチームとしてF1復帰を果たすことになったメルセデスは、7度の世界王者であるミハエル・シューマッハーに対して、新加入のニコ・ロズベルグと組んで戦いの場へ戻るよう説得し、契約に成功した。
F1に再参戦して最初の3年間、メルセデスはコンストラクターズランキングで常に5位以内を確保し、2010年から2013年末までのあいだで6度の表彰台を獲得したが、そのうち5度はロズベルグによるものだった。ロズベルグはまた、2012年のF1第3戦中国GPでチームに初のポールポジションをもたらしている。
ただしボウルズには、2012年第6戦モナコGPでチームにとって2度目のポールポジションをつかんだシューマッハーの走りが、今日に至るまで際立って記憶に残っている。
悲しいかな、このときシューマッハーは見事な戦いぶりを見せたにもかかわらず、決勝ではライバルたちを抑えて最前線からスタートすることができなかった。なぜなら、前のレースでペナルティを科されて、5グリッド降格が決まっていたためだ。
ボウルズと、やはり2012年当時すでにメルセデスの一員だったスポーティングディレクターのロン・メドウズ、チーフエンジニアのサイモン・コール、そしてトラックサイドエンジニアリングディレクターのアンドリュー・ショブリンが、F1のポッドキャスト『Beyond the Grid』の最新回で、シューマッハーの功績について語り合った。
「あれは、おそらく彼の人生で最高の走りのひとつだったと思う。私は飛びあがって喜んだよ」と、ボウルズが当時を振り返った。
「しかし、それから本当に心が痛んだ。あの場にいた誰もが、そしてファクトリーの全員が彼の優勝を願っていた。率直に言って彼はそれに値する仕事をしていたからだ。自分の人生をかけてこのチームをより良くしようと取り組んでいた。見返りが与えられてしかるべきだったし、シーズンを通してみても、あのときがそのチャンスだった」
「まさにそのレースで彼が降格ペナルティを適用されたことが、私には残念でならない。彼がチームに注ぎ込んだ努力を思うとき、それに見合う成績を手にできず悔しかっただろうと思ったし、今でもそう思っている」