「1冊1台」をテーマに、F1グランプリを戦ってきた歴史的名車たちにスポットライトをあてる不定期敢行ムック『GP Car Story(GPカー・ストーリー)』は、2021年の今年、創刊10年目を迎えます。それを記念して【GP Car Story創刊10周年特別企画】として、過去にGPカーで扱ってきた名車たちに再度スポットライトを当てていきます。
今回特集するのは、1991年、ジョーダンがF1デビューを飾った記念すべき1台、『191』。7UPカラーのグリーンが鮮烈な印象を与えました。特にこのクルマが我々に衝撃を与えたのは、ミハエル・シューマッハーのデビュー戦、ベルギーGP。わずか1戦だけの搭乗でしたが、いきなり予選7位につけたルーキーのインパクトは計り知れないものがりました。
あれから30年経った2021年、彼の息子ミックがF1デビューを果たします。偉大すぎる父を持つミックとは対照的に、F1デビュー当時のミハエルの知名度は驚くほど低いものでした。1年目のチームと新人ドライバーが起こした奇跡を振り返っていくことにしましょう。
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ジョーダン史上初のF1マシン『191』。ゲイリー・アンダーソンは、自らデザインしたマシンを振り返り「セットアップが簡単でドライブしやすいマシン作りを心がけた」と語る。
新参チームには、やはり走行距離を重ねることが重要。そのために彼はシンプルなマシンが必要だと判断した。そのシャシーに搭載されたのは、ベネトンの型落ちワークスのV8ユニットであるフォード・コスワースのHBエンジンだ。当時、通常ならばフォードのカスタマーユーザーにはDFRがあてがわれるので、新参チームとしては異例の高待遇を勝ち得ていたと言っていい。
ルーキーチームに課せられる予備予選も、“場違い”のようにあっという間に卒業し、アンドレア・デ・チェザリスとベルトラン・ガショーのコンビは、コンスタントに入賞を重ねていった。第10戦ハンガリーGPまでに延べ7度の入賞とファステストラップまで記録。コンストラクターズ5位の成績は、1年目のチームとして「完璧」と評価できるものだった。
そんな順風満帆のルーキーチームに思わぬ“事件”が起きてしまう!