2021年F1第2戦エミリア・ロマーニャGPで、ルイス・ハミルトンが後方から見事な挽回を見せて2位を獲得した瞬間、メルセデスチーム代表トト・ウォルフの顔には安堵の笑みが浮かんだ。しかしバルテリ・ボッタスと接触したジョージ・ラッセルに対する怒りは収まらず、レース後の会見で厳しい言葉を発した。
メルセデスの育成プログラムのメンバーで、現在ウイリアムズに所属するラッセルは、2022年にはメルセデス入りする可能性が高いとみられている。そのラッセルがボッタスをオーバーテイクしようとして接触が起き、ボッタスはノーポイントに終わった。今年はバジェットキャップが定められていることもあり、マシンが大破したことが今後の開発計画に大きく影響することを、ウォルフは懸念している。
ラッセルはレース直後、ボッタスの防御を強く批判した上に、「なぜ9番手を争っている時に彼はこんなことをしたのか、という疑問が生じる。相手が僕でなかったら、彼はこんなことはしなかっただろう」とまで発言した。
ウォルフ代表は即座にこれを否定し「くだらない!」と吐き捨てるように言った。
「すべてが我々にとって面白くない事態だ。大きなクラッシュで、マシンが1台だめになってしまった。コストキャップの規則が定められているときに、このような事故はまったくもって不必要だ。この事故のせいでアップグレードが制限されることになるだろう」
「彼(ラッセル)は濡れた路面の上でコントロールを失った。その前の時点では接触は起きていなかった。ウエットの路面に乗って、コントロールを失って、2台がクラッシュしたのだ。望まない事態が起きた」
スチュワードはこの接触について調査した結果、どちらかのドライバーに大きな責任があるとはいえず、レーシングインシデントであると結論付けた。ウォルフも、ラッセルが100パーセント悪いとは考えていないが、それでもメルセデスの一員である以上、より慎重に行動すべきだったと非難している。
「人生のなかで、どちらかが100パーセント悪くて、もう片方は全く悪くないというような状況はあり得ない。バルテリの序盤30周はひどいもので、そもそもあの時にあの位置にいるべきではなかった」
「とはいえ、ジョージは、路面がウエットからドライへと変化しつつあることを考えれば、あのアクションを起こすべきではなかった。リスクを伴う行為だし、彼の前にいたのはメルセデスのマシンだったのだ」
「育成ドライバーや若手ドライバーは、より大きな視点を持つことを忘れてはならない。彼には学ぶべきことが多い」