レースを愛してやまないファンの方々へ
autosport web Premiumが登場。

詳細を見る

Blog ニュース

投稿日: 2021.04.29 09:00
更新日: 2021.04.28 20:23

【ブログ】ハースF1初のインターン生としてチームをサポート。多くを学んだシミュレーション業務/木村のF1英国留学日記

レースを愛してやまないファンの方々へ
autosport web Premiumが登場。

詳細を見る


Blog | 【ブログ】ハースF1初のインターン生としてチームをサポート。多くを学んだシミュレーション業務/木村のF1英国留学日記

 将来F1のエンジニアとして働くことを目標にイギリス・ラフバラ大学に留学している現役大学生の木村さん。前回のブログでは、イギリス国内や木村さんの現状などをお伝えしましたが、今回は木村さんが2018~2019年にハースF1初のインターン生としてチームをサポートしたときの経験談をお届けいたします。どうやら日本GPでのファンの姿はチーム内でも盛り上がるようですね。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 

 読者のみなさま、こんにちは。F1のエンジニアになることを志し、イギリスのラフバラ大学に留学中の木村です。ついに待ちに待ったモータースポーツシーズンが到来しましたね。現地イギリスもロックダウンが段階的に緩和され始め、少しずつですが大学や町に賑わいが戻ってきました。

 前回までのブログでは、大学生活のことを中心にお伝えさせていただきましたが、今回からはハースF1チームで1年間お世話になったインターンについてお伝えしたいと思います。

■インターンの経緯と仕事内容

 以前のブログでも触れましたが、イギリスの大学には『プレイスメント』と呼ばれるインターン制度があり、基本的には大学2年と3年生のあいだに1年間大学には行かず、企業でフルタイムにて実践的な経験を積むことができます。この1年間は休学扱いになるわけではなく、大学のシステムの一環として元々組み込まれているので、多くの学生が毎年様々な企業でインターンを行っています。

 F1チームも積極的に取り入れており、メルセデスやレッドブルではトータルで十数人以上の学生が様々な部署に派遣されているそうです。僕もこの制度を利用して2018年夏から2019年夏までの1年間、ハースF1チームのビークルパフォーマンスグループ(通称VPG)という部署でお世話になりました。

2019年F1イギリスGPのレース前ピットガレージの様子
2019年F1イギリスGPのレース前ピットガレージの様子

 履歴書の提出や面接を数回経て採用が決まったのですが、ずっと漠然と憧れていたF1の世界で仕事ができることや、イギリス留学のきっかけとなった小松礼雄エンジニアリングディレクターと同じチームで学ぶことができるという、数年前には想像のできなかった急展開に頭が追い付かず、物凄くふわふわとした気持ちでインターン初日を迎えてしまったのを覚えています。

 初日、イギリスのバンブリーという小さな町にあるファクトリーを訪れて、まず1番最初に驚いたことは従業員の少なさです。その日はF1イギリスGP直後の月曜日だったこともあり、レースに同行しているエンジニアがほとんどファクトリーにいなかったということを踏まえても、想像していたより人数が少なく驚きました。

 ファクトリー自体も非常にコンパクトで、案内をしてもらったのですが、10分程度ですべてを見終わるほどのサイズでした。(ハースのイギリスファクトリーはレースエンジニアリング部門専用で、空力やデザイン部門はイタリアに拠点があります。)そして、インターン生も僕ひとりで、なんとハースF1チームの歴史上初めてのインターン生だということも知り、なぜかより一層緊張しながら初日を終えた気がします(笑)。

 僕の派遣されたVPGという部署は、おもにレースやテストデータの解析、マシンのパフォーマンスに関するシミュレーション業務を担当しているチームで、具体的にはマシンセットアップの性能評価や数理モデルの研究開発、そしてタイヤや空力等の性能分析等々、ここには書ききれないほど多くの仕事を担っています。

 さらに、レースのある週末にはイギリスのファクトリーからライブでデータ解析を行い、サーキットにいるエンジニア達に随時フィードバックを送っています。これだけ多くの業務を6~7人程度のエンジニアだけで、取りこぼしなく完璧に仕事をこなしている姿を一緒に働きながら間近で見て、尊敬すると同時に色々なことを学ばさせていただきました。

2019年F1イギリスGP ケビン・マグヌッセンのマシンをガレージに入れるメカニックたち
2019年F1イギリスGP ケビン・マグヌッセンのマシンをガレージに入れるメカニックたち

 そんななかで、僕はおもにマシンのセットアップに関するシミュレーション業務を担当していました。F1マシンはフロントとリヤの両ウイングやフロア等の空力パーツ、バネの硬さや車高など、足回りのセッティングの組み合わせが無数にあるので、毎レース、コース特性に適したセットアップを持ち込むためにも事前に選定する必要があります。

 その際にコンピューター上でラップタイムやクルマのバランスを、シミュレーション結果をもとに解析し、最終決定を行うレースエンジニアやパフォーマンスエンジニアに提言をするという仕事をしていました。ちなみに各レース、毎回およそ百数パターンのセットアップを様々な路面状況やエンジンモードでシミュレーションして、最適であろうセッティングを検討してからレースに臨んでいます。

 そのほかにも金曜日のレースサポートなど、多くの仕事を丁寧に教えてもらいながら経験をさせていただきました。チームのエンジニアは皆、当たり前ですがプロフェッショナルで、学生の僕にも一エンジニアとして気さくに話してくれて本当に良いチームだなと感じました。

 チームのギュンター・シュタイナー代表も普段はアメリカの本部で働いていますが、用事があってイギリスのファクトリーに来たときに僕のことを見かけると、毎回「キムラサーン!」となぜか“さん”付で声をかけてくれます(笑)。

 小松エンジニアリングディレクターも、多忙な中でも僕や若手エンジニアに声をかけてくれたり、的確なアドバイスをしてくださったので、やはりトップのそういった姿勢がチーム全体に浸透しているのだなと思います。

 ただ僕自身としては、やはり仕事をしている中で多くのことを学んだ一方、勉強不足な部分や、スキル不足だと感じる場面もまだまだ沢山あったので、より一層スケールアップして、いつかまたチームのエンジニアのみなさんと一緒に働けるよう現在も日々勉強を続けています!

「キムラサーン!」と声を掛けてくれるギュンター・シュタイナー代表(ハースF1チーム)
「キムラサーン!」と声を掛けてくれるギュンター・シュタイナー代表(ハースF1チーム)
小松礼雄エンジニアリングディレクターとロマン・グロージャン(ハースF1チーム)
小松礼雄エンジニアリングディレクターとロマン・グロージャン(ハースF1チーム)

■ファクトリーが盛り上がる日本GP

 これは余談ですが、ファクトリーでのレースサポートで一番チームが盛り上がったのはF1日本GPでした。レースサポートをするための部屋(通称レースサポートルーム)には大きなモニターが備え付けられており、ファンの方が見ているのと同じ国際映像も流れているのですが、セッションの合間などに小松エンジニアリングディレクターを応援する横断幕や、ハースF1のチームシャツを着た日本人ファンの方が映ると、みんな喜んで盛り上がっていました(笑)。

 アジアや南米でのレースは時差があり、イギリスだと夜中に働いていることが多いので、基本的にはみんな黙々と仕事をすることが多かったのですが、日本GPではレースサポートルーム全体が明るく仕事をしていて、日本人として嬉しかったです。

 次回はインターンでの経験をより具体的に掘り下げてお伝えできればと思います。今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

2019年F1イギリスGPレース前のピットレーンの光景
2019年F1イギリスGPレース前のピットレーンの光景


関連のニュース

Blog News Ranking

本日のレースクイーン

ROWEN
青山あいり(あおやまあいり)

Blog Photo Ranking

フォトランキング