2021年シーズンで6年目を迎えたハースF1チームと小松礼雄エンジニアリングディレクター。昨年に引き続きオーストリアでは2連戦が行われ、トラブルもなく終えることができたものの、この連戦ではレッドブルリンクのコース特性も相まってニキータ・マゼピンとミック・シューマッハーの“大きな違い”が浮き彫りになった。そんなオーストリアの現場の事情を、小松エンジニアがお届けします。
────────────────────
2021年F1第8戦シュタイアーマルクGP
#9 ニキータ・マゼピン 予選20番手/決勝18位
#47 ミック・シューマッハー 予選19番手/決勝16位
2021年F1第9戦オーストリアGP
#9 ニキータ・マゼピン 予選20番手/決勝19位
#47 ミック・シューマッハー 予選19番手/決勝18位
ようやく最初の3連戦が終わりました。フランスGP終了後には、僕も含めてエンジニアリングのスタッフは一度イギリスに帰りました。今年は23レースのシーズンで、家を離れる時間がただでさえ長いので、自分だけでなく家で待っている家族にとっても大変です。ですから帰れる余裕があるときはイギリスに帰るようにしています。日曜日の夜のチャーター便には他チームのスタッフも大勢乗っていました。
オーストリア2連戦は結局予報されていた雨も降らずに終わりました。まずシュタイアーマルクGPを振り返ると、予選ではミックにミスがあった一方で、ニキータは3回のアタックを通してタイムを上げていき、ミックとコンマ1秒差で終わることができたので、まあまあよくやってくれたという感じです。
ただミックは予選後にタイムが上がらなかったのは自分のミスだったと認め、常にしっかりとしたフィードバックをくれるので、そういう姿勢はチームのやる気にも繋がります。なかには結果が悪かった時に感情的になって、きちんとしたフィードバックをくれないドライバーもいるので、ドライバーとしてのあるべき姿を見せてくれたと思います。
レースではスタートでミックとニキータの順位が入れ替わったので、ミックとしてはニキータに詰まる形になりましたが、ピットストップ後のハードタイヤでのペースはとてもよかったです。先にタイヤを交換したニキータにすぐに追いついてオーバーテイクし、一時はランス・ストロール(アストンマーティン)やエステバン・オコン(アルピーヌ)と遜色ないペースでした。レースでのタイヤの使い方がうまくなってきたことが現れていて、これがシュタイアーマルクGPで一番よかった点ですね。
一方でニキータがペースを落とした原因のひとつはやはり青旗です。10台のクルマを3、4周でやり過ごさなければならないので、この間に20秒ほどタイムロスをしてしまいました。これはほぼピットストップ1回に相当するロスです。よって最終的にはミックから40秒近く遅れてのフィニッシュでした。ミックとの大きな違いはレースペースで、もし同じようなペースで走れていたら、最後までそれほど青旗には引っかからずに走れたはずです。ペースが遅いとレースの早い段階で青旗に引っかかり、他車を抜かせる度にタイヤの温度も落ちるのでラップタイムも悪くなり、タイムロスをするという悪循環に陥ってしまいます。