2021年に7年ぶりに日本人F1ドライバーが登場した。アルファタウリ・ホンダからF1にデビューした角田裕毅だ。極めて高い評価を受け、大きな期待を担う角田を、海外の関係者はどう見ているのか。今は引退の身だが、モータースポーツ界で長年を過ごし、チームオーナーやコメンテーターを務めた経験もあるというエディ・エディントン(仮名)が、豊富な経験をもとに、忌憚のない意見をぶつける。今回は第10戦イギリスGPを振り返る。
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イギリス人は本当に面白い。サッカーのユーロカップのたびに、絶対に自分の国が優勝すると思い込んで大騒ぎをし、結局は負けて打ちひしがれるのだ。イギリスGPでは、ほとんどのチームが「ただいま!」「ただいま!」と騒いでいた。イギリスに本拠を置くチームが多いからだが、シルバーストンは世界選手権最初のイベントが開催された場所だし、イギリスはそもそもモータースポーツのホームといっていい。関係者全員の気持ちが高まるのも当然だろう。
角田少年は、去年のF2シルバーストン戦でいい走りをしていたため、イギリスGPに自信を持っていた。「F1でも問題なし」と思っていたのではなかろうか。だが、ルーキードライバーであるのに、チームが週末の出だしから躓いた場合には、大きな成果は望めない。難しい週末の後に1ポイント獲得できたのは、間違いなくポジティブな結果といっていいだろう。
FP1では角田もチームメイトのピエール・ガスリーも、トップ10のすぐ下あたりのタイムを出しており、悪くはなさそうだった。角田はガスリーから0.15秒遅れ。「よしよし、どこまでやれるか見せてくれ」と私のなかでも期待が高まったが、チームがセットアップを間違えたせいで、ふたりとも予選で苦戦した。
そういう状況では経験がものをいう。ガスリーはなんとかQ2に進出したが、裕毅は0.026秒足りなかった。だが彼は、捨て身の走りをすることもなく、スピンもせず、ウォールにもヒットしなかった。翌日に改めて戦おうという冷静さを持っていたのだ。