2021年F1第10戦イギリスGPで各チームが走らせたマシンを、F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルが観察、印象に残った点について解説する。今回は、メルセデスのアップグレードの効果について検証する。
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メルセデスがイギリスGPに導入したアップデートが、効果を上げたことは間違いない。フロアとディフューザーにより多くの仕事をさせる方向で、空力効率を上げる。その目論見は、かなりうまくいったと言っていいだろう。その結果シルバーストンではリヤウイングをより寝かせることができ、ドラッグを減らせていた(黄色矢印参照)。実際イギリスGPでは最高速も、レッドブルを上回っていた。
とはいえ今回のアップデートは、レッドブル追い落としに十分なものといえるだろうか。リヤウイングに関していえば、W12のそれはレッドブルのRB16Bほど薄いものではない。できるだけ彼らに近づけようと、ルイス・ハミルトン車ではガーニーフラップが外されていた。同じ試みは、マックス・フェルスタッペン車でも見ることができた。両チームともに、チームメイトはガーニーフラップをつけて、より多くのダウンフォースを発生する仕様を選択した(青矢印参照)。
初日予選でのハミルトンは、フェルスタッペンをしのいで最速タイムを叩き出した。とはいえ0.075秒の僅差であり、翌日のスプリント予選ではポールポジションを奪われている。
その理由の一つは、初日と二日目以降の路面温度の違いだった。フロントタイヤのブリスターを恐れたレッドブルはキャンバー角を控えめにし、最高でも37度だった初日の路面温度では十分にタイヤを温めることができなかったのだった。
しかし49度まで上昇した二日目のスプリント予選のコンディションはレッドブルに有利な状況となり、フェルスタッペンが1周目から速さを発揮できた(最高速ではなく、あくまでラップタイムの速さだが)。日曜日の路面温度も47度と高く、もし1周目のクラッシュがなければ、フェルスタッペンの方がラップタイムでは速かったはずだ。
今回のアップデートで、メルセデスはレッドブルにどこまで追い付けたのか。その意味でまったくコース特性の違う今週末のハンガリーGPでのパフォーマンスが注目されるが、まだ十分なレベルではないというのが、現時点での筆者の見解だ。