2021年F1第10戦イギリスGPで各チームが走らせたマシンを、F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルが観察、印象に残った点について解説する。今回は、レッドブルのアップグレードを取り上げる。
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メルセデスに比べればずっと目立たない形ではあったが、レッドブルもイギリスGPでマックス・フェルスタッペンのマシンに新たな空力仕様を導入した(セルジオ・ペレスは基本的に、1レース遅れて改良型の恩恵を受けている)。
今回のアップデートは、リヤタイヤに近い位置のフロアエッジに施された階段状に積み上がった3枚のフラップだ(黄色矢印参照)。その形状からすると、サイドポッド脇を通過する気流を外側から上方へと導く整流効果を意図しているように見える。しかし同時に、フロア下の気流も吸い出され、逆にフロア下の負圧が下がってしまうように感じるのは素人考えすぎるだろうか。
レッドブルの空力部門の責任者だったダン・ファローズにその真意をぜひ訊いてみたいところだが、ダンはアストンマーティンに引き抜かれ、現在ガーデニング休暇という名の軟禁状態中にある。
ちなみにレッドブルにとっては、これがこの8戦のなかで7つ目のアップデートとなる。シーズン中の改良版投入に消極的なメルセデスとは対照的に、来季の開発は大丈夫かと心配になるほどRB16Bの改良に精力を傾けている。
これまで明らかになっただけでも、第3戦ポルトガルでフロア、バージボード、ブレーキダクト、第4戦スペインで再びブレーキダクト、第5戦モナコでフロントウイング、ディフューザー、第6戦アゼルバイジャンで前後のウイング、オーストリア2連戦では初戦でディフューザー、2戦目にフロントウイング、サイドポッド脇のデフレクターと、まさに休むことを知らない。
この7年間、タイトルを独占し続けてきたメルセデスの牙城を崩す最大のチャンスがやってきたと、彼らは覚悟を決めているのだろう。