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F1 ニュース

投稿日: 2021.09.10 13:29
更新日: 2021.10.21 17:23

【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第13回】説明不足が招いたニキータの不信感。ドライバー間の取り決めを見直しへ

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F1 | 【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第13回】説明不足が招いたニキータの不信感。ドライバー間の取り決めを見直しへ

 2021年シーズンで6年目を迎えたハースF1チームと小松礼雄エンジニアリングディレクター。36年ぶりのオランダGPは改修工事を終えたザントフォールトで行われ、小松エンジニアも約20年ぶりにこの地を訪れた。だがそのオランダGPはドライバーの間で問題が相次ぎ、一筋縄ではいかない週末に。現場の事情を小松エンジニアがお届けします。

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2021年F1第13戦オランダGP
#9 ニキータ・マゼピン 予選20番手/決勝リタイア
#47 ミック・シューマッハー 予選19番手/決勝18位

 昨年復活予定だったオランダGPをようやく迎えることができました。ザントフォールト・サーキットはそれぞれのコーナーに特徴があってとてもおもしろかったです。以前行ったのはもう20年ほど前(琢磨くんとF3のマスターズで行ったきりでした)なのですが、すっかり変わっていました。

 コースを解説すると、まずややキャンバーのついている1コーナーへの進入は狭く、アンダーステアに苦しめられました。3コーナーのアプローチにある2コーナーもアンダーが出て、なかなか思うようにクルマをポジショニングできず。続く3コーナーはかなりキャンバーがついており、FP1で走り始めた当初はラインがいくつかあって、ドライバーによって違うアプローチが見られておもしろかったです。

ミック・シューマッハー(ハース)
2021年F1第13戦オランダGP ミック・シューマッハー(ハース)&ジョージ・ラッセル(ウイリアムズ)

 3コーナーを立ち上がって全開で登りながら向かう先の7コーナーはタイヤにとても厳しいコーナーです。そこからさらに右コーナーがふたつ続くのですが、どんどんとRはきつくなっていきます。しっかりとブレーキを踏んだ後の9コーナーから10コーナーへの繋がりは風の影響もあり、クルマのバランスがアンダーステアからオーバーステアに変わります。

 その後、追い風を受けながら11コーナーへのブレーキング。ここは風の影響で多くのドライバーが苦労していました。ここでミスをすると続く12コーナーに入る前にグラベルに突っ込むことになります。フリー走行ではここでグラベルにハマったドライバーにより赤旗が出ました。

 続く13コーナーの外側にもグラベルトラップがありますが、あんなにバンクのついたグラベルエリアを見るのは初めてです。ここを立ち上がったら大きなバンクがついている最終14コーナーを全開で抜けて1周が終わります。

 どのコーナーも映像で見て一目でそれぞれどこのコーナーかがパッとわかるくらい特徴があり、グラベルが本来のトラックリミットの役割りを果たしていたりと、とても挑戦しがいのあるサーキットでしたが、オーバーテイクがかなり難しいのが難点でした。

ニキータ・マゼピン(ハース)&小松礼雄エンジニアリングディレクター
2021年F1第13戦オランダGP ニキータ・マゼピン(ハース)&小松礼雄エンジニアリングディレクター

 バンクのついたコーナーがあるので、パワーユニット(PU)への影響も心配されましたが、フェラーリPUに関しては特に問題はありませんでした。ウチは3機目のエンジンを投入したのですが、まったく問題なく週末を通して走れました。レースでは残念ながらニキータのクルマに油圧系の問題が出てしまいリタイアとなりましたが、これは特にコースに起因するものではありません。

 今回おもしろかったのは、路面にラバーが乗るにつれて、レーシングラインもどんどん変わっていったことです。先にも書きましたが3コーナーなどはこれが顕著でした。FP1では様々なラインがあったものの、ラバーがのってきたFP2からは最適なラインはほぼひとつしかありませんでした。

ニキータ・マゼピン(ハース)
2021年F1第13戦オランダGP ニキータ・マゼピン(ハース)

 また通常のサーキットと比べると予選中でもラップタイムの変化が大きかったです。これはフリー走行中に赤旗が数度出て実際に走れる時間が比較的少なかったことや、刻々と変わる風の状況に対するドライバーの慣れもあったと思います。ウチに関してはふたりともFP3でのクルマの挙動に比較的満足していたので、予選に向けてのセットアップ変更はほぼ通常どおりの路面の変化を考慮にいれて行いました。

 そして今回は(も)週末を通して風の変化がクルマの挙動に大きく影響しました。全体的な風向き自体は安定しており、常に11コーナーへのブレーキングで追い風となっていました。10コーナーなどはコーナーの真ん中あたりでクルマが受ける風向きが変わるので、バランスがガラっと変わります。FP2ではFP1に比べて風が強くなり、セッション中は常にコンディションが安定しなかったので、なかなか難しいセッションとなりました。風で飛んでくる砂の影響も懸念してはいたのですが、僕らが走る直前に他のシリーズの走行があったおかげか、予測していたほど影響はありませんでした。

■次のページへ:走行ポジションをめぐって一悶着。ドライバー間の取り決めを見直しへ


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