2021年に7年ぶりに日本人F1ドライバーが登場した。アルファタウリ・ホンダからF1にデビューした角田裕毅だ。極めて高い評価を受け、大きな期待を担う角田を、海外の関係者はどう見ているのか。今は引退の身だが、モータースポーツ界で長年を過ごし、チームオーナーやコメンテーターを務めた経験もあるというエディ・エディントン(仮名)が、豊富な経験をもとに、忌憚のない意見をぶつける。今回は2021年F1第15戦ロシアGPを見ての感想を語ってもらった。
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ロシアGPの裕毅についてコメントしてくださいという電話を受けた後、私はまるで『ウォーリーをさがせ!』の絵を血眼になって見ているような気分になった。私はいつも、集中して非常に真面目にF1を観察している。ほんのわずかな出来事も見逃すことはないのだ。その私が、ロシアGPで裕毅が何をしていたのか、さっぱり思い出せない。ひょっとして、いなかったのではないかと思うぐらいだ。
だが、私は誰よりも勤勉でプロ意識の高い天才だ。その後、自分なりに調査を実施した結果、──「私たちが調べたことを自分が調べたみたいに言わないでください」だって? 編集者は黙って私の話をメモしていればいいんだ──……ええと、私が自分で調査をした結果、なぜ角田に気付かなかったのか、すぐに分かった。あの週末、彼はいなかったのだ!
もちろん、実際にいたことは知っている。私はばかではないからね。「私たちが知っている彼はいなかった」という意味だ。週末を通してあの子はピエール・ガスリーに完全に圧倒されていた。アルファタウリのふたりはこれまでもラップタイムに大きなギャップがあったが、それにしても1周2秒の差というのは見たことがない。