10月21日(木)、本田技術研究所 HRD Sakuraがオンライン会見を行い、HRD Sakuraのセンター長兼F1プロジェクト LPLの浅木泰昭氏がこれまでの開発を振り返った。
ホンダのF1最終年となった2021年シーズン。第16戦トルコGPを終えた時点で、レッドブルのマックス・フェルスタッペンが7勝、セルジオ・ペレスが1勝を挙げ、王者メルセデスとタイトル争いを繰り広げている。コンストラクターズ選手権では2位につけているものの、ドライバーズ選手権では現在フェルスタッペンがリードしている状況だ。
またアルファタウリではピエール・ガスリーがコンスタントに入賞を重ねつつ表彰台を獲得する活躍を見せ、ルーキーの角田裕毅もここまでに5回の入賞を果たし経験を積んでいる。
浅木氏は今回の会見冒頭で「技術者たちがどんなこと開発をしてきたかというのを後世にも残したい」と述べ、HRD Sakuraのセンター長に就任した2018年からの開発を振り返った。
2018年はスペック1〜3を投入したシーズンで、スペック2を使用していた頃は「レッドブルがこれを見て、2019年からホンダのPUを使うかどうか判断する」という時期だった。その後のスペック3も含めて、2018年は開発に尽力していた時期だったという。
「スペック2の頃は、これを見てレッドブルがホンダと組むか組まないかを決めるというので、ホンダも必死になっていました。スペック3では新しい燃焼コンセプトに取り組みましたが、急いで開発をやらないと2019年からの戦いに間に合わないということで、2018年は必死でした」
「スペック2までは効率が上がらなくて苦しんでいましたが、スペック3では燃焼モードが変わったんです。これまではピストン周辺のエンドガスが燃えてノックが起きていましたが、スペック3では着火までは同じですが、ノックが起きるところのガスを先に燃やすことでノックが起きなくなりました。ピストン周辺も中心も燃えて、超高速の燃焼になります」
「しかしこれだと急激に圧力や熱が発生するということになるので、ピストンなど今まで想定してなかったものが壊れました。それに耐えられるようなものをひとつずつ作っていったので、時間が必要だったのです。2018年は戦略的と言いつつたくさんのエンジンを出させてもらい、当時のトロロッソには迷惑をかけましたが、レッドブルと戦うために必死でこの辺りを直していきました」
「2019年はレッドブルと組みましたが、どんどん相手も速くなって簡単にはいかなかった年でした。パワーが上がると回生量が下がるので、必死に制御を開発して回生量が落ちないようにもしました。最後の方はメルセデスもそろそろ頭打ちかと思いましたけど、そう思って臨んだ2020年、メルセデスはまだ余力を持っていました。回生量についても、オーストラリアでは認められていた制御をオーストリアで禁止され、回生量が下り、パワーも回生量も非常に苦しいシーズンでした」