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F1 ニュース

投稿日: 2021.12.13 06:12
更新日: 2021.12.13 06:17

物議醸すセーフティカーの手順。メルセデスF1、王座の行方を決定づけたFIAの違反に抗議も認められず。上訴の意思を提出

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F1 | 物議醸すセーフティカーの手順。メルセデスF1、王座の行方を決定づけたFIAの違反に抗議も認められず。上訴の意思を提出

 F1最終戦アブダビGP決勝終盤のふたつの出来事について、メルセデスF1チームは抗議を提出したが、スチュワードはいずれも棄却し、マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)の優勝とタイトル獲得を認めた。

 ルイス・ハミルトン(メルセデス)とフェルスタッペンは同点で最終戦に臨み、ハミルトンが決勝2番グリッドからスタートで前に出て、レースを終始リードした。ハミルトン優勝の可能性が高いと思われたものの残り数周のところでニコラス・ラティフィ(ウイリアムズ)がクラッシュ、58周のレースの54周目にセーフティカーが出動した。この際、2番手を走行していたフェルスタッペンは新品ソフトタイヤに交換、リーダーのハミルトンはステイアウトした。

 その後、レースコントロールが実施したセーフティカーにまつわる手順は、レギュレーションに従ったものではないとの批判を受けるものだったが、それがタイトルの行方を決定づけることになってしまった。

2021年F1第22戦アブダビGP タイトルを逃がし失意に沈むルイス・ハミルトン(メルセデス)と父アンソニー
2021年F1第22戦アブダビGP タイトルを逃がし失意に沈むルイス・ハミルトン(メルセデス)と父アンソニー

 レギュレーションには、セーフティカーピリオドが終了する前に、周回後れのマシンがリーダーたちをオーバーテイクすることが許され、最後の周回後れのマシンがリーダーを抜いた後、セーフティカーはその次のラップの終わりにピットに入るよう定められている。

 ところがアブダビGPでは、レースコントロールは最初は、周回後れのマシンはオーバーテイクすることは許されないと通達。その段階ではハミルトンとフェルスタッペンの間に5台の周回後れがはさまっていた。レースコントロールはその後、この5台だけがハミルトンの前に出ることを許した。そしてセーフティカーがすぐさまピットに戻り、最終ラップ1周のみのスプリントが行われることになった。ハミルトンは1回ストップでハードタイヤを長く持たせる戦略で走っており、フェルスタッペンは交換したての新品ソフトタイヤを履いていたため、フェルスタッペンは比較的簡単にリードを取ることができ、優勝を飾って、タイトルを手に入れた。

 当然のことながら、メルセデスはこのレースコントロールの行動に強い不満を持ち、「ふたつの競技規則への違反がある」として抗議を行った。F1競技規則第48.12条に定められたセーフティカーの手順についての抗議に加え、メルセデスはセーフティカー先導時にフェルスタッペンが一瞬ハミルトンより前に出たことを指摘、合計ふたつの抗議を提出した。

 これに関するヒアリングが行われた後、決勝終了の数時間後にスチュワードはふたつの抗議を棄却することを決定した。

 まず、F1競技規則第48.8条(セーフティカーがピットに戻った後も最初のラインを超えるまで他のマシンをオーバーテイクしてはならない)へのフェルスタッペンの違反の疑いについては、フェルスタッペンはほんの短い間、一度ハミルトンの前に出たものの、すぐに後ろに戻り、セーフティカーピリオドが終了した際には前に出ていなかったとして、フェルスタッペンに違反行為はなしとの裁定を下した。

 続いて第48.12条に関する抗議についても、スチュワードはこれを棄却すると発表した。第48.12条にはセーフティカー出動の際の周回後れへの対処について記されている。ここには「リーダーに周回後れにされた車両は、リードラップの車両とセーフティカーをパスすることが求められる」「周回後れの最後の車両がリーダーをパスした後、セーフティカーはその次の周の終わりにピットに戻る」と記されている。

 前述のように、アブダビの場合、周回後れの一部(ハミルトンとフェルスタッペンの間にいたマシン)のみが前に出ることを許され、セーフティカーは「次の周」ではなくその周にピットに戻った。それにより、最終ラップ1周のバトルが可能になった。

 メルセデスがこれを不服とするのは当然であるが、スチュワードは次のような理由でこの抗議を棄却した。

2021年F1アブダビGP スチュワードルームから出てくるメルセデスのアンドリュー・ショブリン、ポール・ハリス、ロン・メドウズ
2021年F1アブダビGP スチュワードルームから出てくるメルセデスのアンドリュー・ショブリン、ポール・ハリス、ロン・メドウズ

「第15.3条によって、レースディレクターがセーフティカーの利用をコントロールすることが許されている。我々の判断では、ここに(セーフティカーの)出動と撤退も含まれる」とスチュワードの声明には記されている。

「セーフティカーは次の周にピットに戻るという点において、第48.12条が完全には適用されなかったかもしれないが、第48.13条の、『セーフティカーがこの周に入る』という表示が出た場合、その周の終わりでセーフティカーを撤収させる義務があるという規定が、それに優先される」

「メルセデスは、スチュワードは最後から2周目の終わりの順位を反映する形でリザルトを修正することでこの件を修復すべきだという要求を行った。だが、スチュワードとしては、それは事実上、遡及的にレースを短縮することになると確信しており、それは適切ではないと判断した」

 周回後れの件について、レースディレクターは、「第48.12条の目的は、リーダーの間のレースを“妨げる”周回後れを取り除くことにあるため、第48.13条が本件では適用された」述べている。また、「以前から、“グリーンコンディション”(セーフティカー先導ではない状態)でレースを終えることが非常に望ましいという点で、全チームが合意していた」とも述べている。

 この裁定を発表した後、FIAはアブダビ決勝の正式結果を発行し、フェルスタッペン優勝およびタイトル獲得を確認した。しかしメルセデスは、第48.12条のセーフティカーにまつわる手順に関する抗議が棄却されたことに対し、すぐさま上訴の意思を提出した。


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