2022年F1には新技術レギュレーションが導入され、新世代F1マシンが登場する。どのような変更があり、どのような影響が予想されるのか。formula1.comでの解説でもお馴染みのF1ジャーナリスト、サム・コリンズが、2022年F1にまつわる10の疑問に答える(全2回)。
前編では、「2022年にはマシンのどこが変わる?」「オーバーテイクしやすくなる?」「2021年よりどれぐらい遅くなる?」「18インチタイヤになって何が変わる?」「新燃料の影響は?」の5つの問いに対して、コリンズ氏が答えてくれた。
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Q1)2022年にはマシンのどこが変わる?
A1)2022年F1シーズンにおける最大の変更は、完全に新しい空力レギュレーションが導入されることだ。その結果、2021年のデザインとはまるで異なるマシンが登場する。
今年のレギュレーションには、F1史上最大規模の変更が盛り込まれている。変更の目的は、マシン同士のバトルを増やし、チーム同士のパフォーマンス差を縮めることによって、よりエキサイティングなレースを実現することだ。
ニューマシンは、シンプルなボディワークと18インチに大径化されたホイールリムのタイヤにより、ルックスが一変する。一目で分かるのはそういった部分だが、全体のコンセプトの核となる部分が変更されたことが重要だ。2022年にはグラウンドエフェクト・カーが復活する。マシンがダウンフォースを生む方法が完全に変わるわけだ。
変更されるのはボディワークだけではなく、重要なメカニカル上の変更もいくつかある。サスペンションシステムはより単純化され、より厳しいクラッシュテスト要件により、安全システムの改善が図られた。標準パーツが増やされ、デザインの詳細を全チームが共有する部分ができる。
Q2)オーバーテイクしやすくなる?
A2)オーバーテイク自体がたやすくなることはないだろう。フロントホイールが大きくなる分、ドライバーの視界が悪くなり、マシン同士の接触が多くなるかもしれない。フロントタイヤの上に設置されるウェイクコントロールデバイスは、ドライバーの視界に直接入ってしまう。
しかしながら、新ルールをうまく機能させるために、ウェイクをコントロールすることは不可欠だ。2022年には、接触なくオーバーテイクを成功させることは今までより少し難しくなってしまうかもしれない。だが、前のマシンに近づくことは今までよりはるかにたやすくなるはずだ。それにより、オーバーテイクのチャンスは増えることになるだろう。
リサーチによると、前世代のF1マシンは、前のマシンの3車身後ろまで近づくと、ダウンフォースの35パーセントが失われ、さらに1車身後ろまで近寄ると、ダウンフォースの損失分は47パーセントに上るという結果が出ている。これは先行車のリヤからの乱気流(ダーティエア)によるものだ。乱気流が後続車のフロントウイングに悪い影響を及ぼし、結果的にマシン全体の挙動を乱すことになる。
グラウンドエフェクトのソリューションを採用し、ボディワークがシンプルになった2022年型マシンは、こういった現象からの影響を受けにくく、従って、今までより前のマシンに接近しやすくなり、激しいバトルが展開される可能性が増えるはずだ。