2022年シーズンで7年目を迎えたハースF1チームと小松礼雄エンジニアリングディレクター。3年ぶりのオーストラリアGPでは、アルバートパーク・サーキットのレイアウトが変わり、路面も再舗装され、各チームが様々な影響を受けた。もちろんハースも例外ではなく、今回は入賞を逃す結果に。それでも決勝ではドライバーふたりがチームのことを考えて行動し、信頼関係に前進が見えたという。そんなオーストラリアGPの現場の事情を小松エンジニアがお届けします。
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2022年F1第3戦オーストラリアGP
#47 ミック・シューマッハー 予選15番手/決勝13位
#20 ケビン・マグヌッセン 予選17番手/決勝14位
3年ぶりのメルボルンは週末全体で過去最高の42万人ものお客さんが来場したとのことで、盛り上がっていました。印象的だったのはギュンター(・シュタイナー/チーム代表)のファンがたくさんいたことですね。ケビンのファンも多くて、顔を大きくプリントした応援グッズを持っている人もいました。
アルバートパーク・サーキットはレイアウトが変わり、路面も再舗装されました。予選ではこの両方の影響を受けましたね。予選結果が振るわなかったのは特にタイヤに苦労したからで、再舗装されて凹凸のないツルツルとした路面でソフトタイヤを機能させられなかったのが原因です。
サウジアラビアも同じような路面なので兆候はあったのですが、今回はFP2でガソリンの量を軽くして予選練習をした時も全然ダメでした。タイヤをきちんと使えていない時は、コーナーのあるところではタイヤが機能したり、別のところでは機能しなかったりと安定せず、しかもそれがフロントで起きたりリヤで起きたりと一貫性のないクルマになります。僕たちはそれに苦労していました。
ケビンは木曜の夜から体調を崩していて、金曜日の走行に影響が出ました。しかしそれでもクルマやタイヤへのフィードバックは相変わらずとてもよかったですし、プログラムも通常通りにこなして、周回数もミックと同じくらい走ってくれました。しかし、本当のクルマのポテンシャルがどこにあるかというのは見極めづらかったですね。
ただ金曜の体調不良を踏まえても、ケビンのQ1敗退という結果は想定外でした。Q1はプッシュ(計測)→クールダウン→プッシュのサイクルを2回やろうと思っていたのですが、2度目の計測ラップ前にセッション残り時間2分1秒のところで赤旗になりました。アルバートパークはアウトラップに2分4秒ほどかかるので、赤旗の後はすぐにコースに出ないと間に合いません。それでもアタックに向かわなければならないなかで、ピットレーン出口でセッション再開を待っているうちにタイヤが冷え、アタックラップではセクター1でコンマ4秒のロスがありました。
ミックはなんとかQ2に進みましたが、2回目のアタックで新品ソフトを履いてもQ1のタイムを上回ることができませんでした。アウトラップのセクター3で3台のトラフィックに引っかかったのも影響しましたが、それがなくてQ1と同じくらいのタイムを出せていたとしても14番手くらいだったでしょうし、ケビンもミスがなくても1分19秒6くらいだったと思います。ですから残念ながら今回はQ3に進めるポテンシャルはなかったです。